国際会議ICIM2018の開催

11月27日から29日にかけて,イノベーションとマネジメントに関する国際会議:International Conference on Innovation and Management 2018 (略称:ICIM2018)が下関グランドホテルにて開催されました。この国際会議は日本,中国,オランダ,ブラジルの有力大学が中心となって運営しております。2004年に中国の武漢で第1回目の会議が開催されて以来,今回が15回目となります。今回は山口大学大学院技術経営研究科がホストとなって準備を進めました。

また,同じ会場において,以前にもご紹介した,MOT教育に関する国 際会議: International Symposium for Asian MOT Education (ISAME)を併催しており,中国,南米,欧州に加えて,東南アジアからも多くの参加者を迎え,盛況のうちに幕を閉じることができました。ご尽力いただいた関係者の皆様にはこの場を借りて厚く御礼申し上げます。

ICIMの詳細については次のリンクをご覧ください(英語):http://icim2018.mot.yamaguchi-u.ac.jp/

西日本MOTコンソーシアムメールマガジン第182号(2018年11月)より転載


蓄エネの時代へ(その2)

以前(5月)の本欄で「再生可能エネルギーの2019年問題:蓄エネの時代へ」と題して,社会の関心が太陽光発電から蓄電池へと移ってきているという話を書きました。

当時は,売電に依存した再エネ普及モデルは終焉を迎えつつある,という趣旨で文章を書きましたが,今年の9月6日に発生した「北海道胆振東部地震」とその後の全島停電という事態により,防災・非常用電源という観点から蓄電池への関心が高まっています。

具体的には,住宅用太陽光発電を自家消費するために家庭用の据え置き型蓄電池を設置したり,電気自動車と連携させたりする(V2HやH2V)ことが,温暖化防止につながるだけでなく,災害時の非常用電源としても役立つということです。

現在,小職は山口県の「電気自動車中古バッテリーリユース実証試験」に係っているのですが,急にあちこちから問い合わせが来るようになっております。

売買電からの脱却という観点だけでなく,非常用電源という観点も加えて,蓄エネ・ビジネスの可能性を,技術と経営の両面から追及してみたいと思います。

西日本MOTコンソーシアムメールマガジン第182号(2018年11月)より転載


ビッグイベントの経済効果

先月(2018年9月)の14日から山口きらら博記念公園で「山口ゆめ花博」が開催されています。最終日(11月4日)までの来場者数の目標は50万人ですが,開催から2週間経った9月28日には25万人を突破しています。先日,筆者が会場に足を運んでみたところ,大へんな賑わいでした。県外からも多くの来客があるようです。このままいけば成功は間違いないでしょう。

さて,「ゆめ花博」は地域のビッグイベントですが,日本全体のビッグイベントといえば2020年の東京五輪があげられます。ビッグイベントがあると,経済効果の試算結果がまことしやかに発表されますが,これはどうも注意して拝聴しなければいけない数字のようです。

Jeffrey G. Owenによる"Estimating the Cost and Benefit of Hosting Olympic Games: What Can Beijing Expect from Its 2008 Games?" (The Industrial Geographer, Vol.3, Issue 1, pp. 1 - 18)という長いタイトルの論文があるのですが,これを読むと,五輪のような,ビッグイベント(というよりもメガイベントという方が相応しい)の経済効果予測には,多くの問題が含まれていることに気づかされます。

例えば,経済効果予測では機会費用が無視されがちだということが指摘されています。この場合の機会費用とは,ビッグイベントではなく他の活動を選んでいたら得られたであろう利益のことです。具体的に言えば,五輪に関与する時間を別の経済活動に充てることができたら,より多くの収入が得られたかもしれない,という検討が,五輪の経済効果予測では抜けていることが多いということです。

他にも費用と便益の混同,過大な乗数効果など,経済効果予測には多くの問題が含まれていると指摘されています。ビッグイベントに関する経済効果の試算結果は鵜呑みにできないということです。

西日本MOTコンソーシアムメールマガジン第181号(2018年10月)より転載


ラオスのビジネス環境の進展について

これまでの記事でもお伝えしたように,山口大学大学院技術経営研究科は,2008(平成20)年度からJICAの委託業務としてラオス国立大学MBAコースへの短期教員派遣を行っております。この夏も私を含め2名の教員が派遣されており,技術経営の講義を行うのはこれで10年目となります。

ラオスは後発途上国に分類されておりますが,その経済成長率は年7%前後とASEAN諸国の中でも高く,今後の発展が期待されています。

毎年,首都ヴィエンチャンを訪れる度に驚くのが,ビジネスの仕組みの進展の速さです。今年は,飲食店でAlipay(支付宝)にも似たQRコードと携帯電話による決済システムが普及しているのを目撃しました。ラオスでは道路や電力などのインフラの進展は緩慢ですが,ICTを活用したビジネスの展開に関しては,日本の方が後れを取り始めているような気がしました。

テレビでは「日本のここが凄い」とか「日本は世界から注目を浴びている」とかいった趣旨の番組がよく見られますが,海外に出ると,そんな自己満足 に浸っていられないぐらいの変化の潮流を感じます。

西日本MOTコンソーシアムメールマガジン第180号(2018年9月)より転載