学費について 国会での重要な質問

 

第153回国会参議院文教科学委員会平成13年10月30日 第2号 議事録抜粋

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○鈴木寛君 民主党・新緑風会の鈴木寛でございます。
 私も大仁田委員と全く同じ気持ちで、夢と希望の国日本をつくりたい、そういう思いで本委員会に所属をいたしました。
 質問をさせていただきたいと思います。
 今日の世界そして日本の現状を見ますと、歴史上これほどまでに教育の重要性が高まっている時期はないと痛感をせざるを得ません。先日、世界じゅうを震撼させ、私たちも本当に心を痛めました米国の同時多発テロ事件、あの大惨事を発生せしめたその根底には、行き過ぎた洗脳教育があるということを私たちは忘れてはならないと思います。
 「戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない。」という名文句の宣言のもと創設をされましたユネスコにおきましても、今回テロリズムの根絶に関する決議を採択いたしましたが、平和の回復と創造の出発点もまさに教育であるということを私たちは再認識したいと思います。
 同時に、個人並びに家族の人生の充実とそれを支える社会、国家、その健全な発展もまさに教育にかかっております。
 そうした観点から、人が学ぶ権利、すなわち学習権は最も尊重されるべき基本的人権の一つであり、すべての人々の学習権の向上と充実を図っていくことが二十一世紀にこの国会に身を置く我々の務めであると存じております。
 特に、二十一世紀は知の時代になると言われております。そうした中、日本人並びに日本国の将来は知恵と人材をいかにはぐくみ活用できるか、まさにそのことに尽きている、そのように思います。我が国におきます高等教育の盛衰こそが二十一世紀の日本の命運を決すると言っても過言ではありません。
 私自身も、本年三月まで慶応義塾大学の湘南藤沢キャンパスの助教授として教鞭をとってまいりましたし、現在もなお、先ごろノーベル化学賞を受賞されました野依教授が学ばれました高等学校におきまして、毎週生徒の指導にも当たっております。
 そうした現場経験から、高等教育を受ける意欲のある人々への経済的支援とそうした学生を受け入れる側の大学のガバナンス、これについてもっときちっとした議論を行ってその抜本的な拡充と強化を行うことが大変に重要なことだということを常々感じてまいりました。
 大学のガバナンスにつきましては次回に譲ることといたしまして、本日は、高等教育を受けていきたい、そうした思いを持った学習者の支援に絞って御質問をさせていただきたいと思います。
 現在、政府内におきまして特殊法人改革の議論がなされておりますけれども、その議論の俎上に日本育英会も上っていると思います。同会は、昭和十九年の発足以来、我が国の育英奨学事業の中核的な機関といたしまして極めて重要な役割を担ってまいりましたが、その育英会が現在廃止の方向で議論が進められていると仄聞をいたしております。
 このままの議論が進みますと、本当にこの日本育英会が廃止をされてしまうのかどうか、具体的に行革事務局と文部科学省との間で今までにどのような議論があって、この議論が今後どういうふうになるのか、その見通しについてお伺いをいたしたいと思います。
○国務大臣(遠山敦子君) 日本の将来は人にありということで、特に学びたい人に奨学金を与えるということは大変大事だと思っております。私どもはその信念に変わりはございません。
 このたびの特殊法人等改革におきまして、八月十日に個別事業の見直しの考え方というのが出たわけでございますが、その中で、日本育英会につきましても行政改革推進事務局の指摘と我が省の意見が両論併記の形で公表されております。
 そこでは、行政改革推進事務局からの指摘に対しまして我が省が答えているわけでございますが、事務局からの指摘は、一つは無利子奨学金の絞り込み、二つには有利子奨学金の国民生活金融公庫の教育貸し付けとの統合の点が主な指摘点でございました。これに対して我が省といたしましては、奨学金制度全体の充実の必要性、それから奨学金と教育貸し付けとは機能が異なるなどの意見を述べていたところでございます。
 廃止・民営化というのが大きな特殊法人についての構造改革のねらいになってございます。その中で、九月四日に我が省より、日本育英会の行う事業は公益性が高く、独立採算できないものであって、廃止・民営化は困難であるということで、ただ、その必要な条件が満たされて、育英奨学事業が今よりさらに充実されるというのであれば、現在とは別の法人形態について検討の余地はあると報告させていただいたところでございます。
 これに対しまして、十月五日には、行政改革推進事務局より、廃止・民営化について、育英奨学事業の拡充の方針に留意しつつ、他の法人との統合による廃止を含め引き続き検討というふうに意見が示されたところでございます。
 今後は、平成十三年中に策定されることとなっております特殊法人等整理合理化計画に向けまして、さらに行政改革推進事務局と協議していくこととなっておりますが、我が省といたしましては、いろんな角度からこの問題について十分に考え、政策金融のあり方の方向なども踏まえながら、育英奨学事業の充実を図る観点から引き続き適切な対応に努めてまいりたい、そのような所存でございます。
○鈴木寛君 米百俵を唱えられております小泉政権下で、形はともあれ、日本育英会を廃止せよという意見が出ていること自体残念でございます。とりわけ、やはりこの育英会の将来については多くの方々が御心配をされていると思います。今、国民金融公庫などへの移管というお話もございましたが、その場合に本当に受給者にとって条件などで厳しくなることがないのか、そのことについてはぜひ御留意をいただきたいと思います。
 それから、日本育英会が消えてしまうかもしれないということに関連をいたしまして、地域改善対策特定事業に係る国の財政特別措置法に基づく奨学金制度についても少しお伺いをいたしますが、本制度は二〇〇一年度末をもって期限切れとなる予定でございまして、政府はこれについては期限の延長をせず、別制度、予算枠を持って対応するとし、同制度の切り捨ては行わないとされておりますが、仮に育英会がなくなってしまうということになりますと大変心配なわけでございますが、ぜひ期限切れ後も同制度の趣旨が実質的に損なわれないようにお願いを申し上げたいと思いますが、文部科学大臣の御答弁をお願い申し上げたいと思います。
○副大臣(岸田文雄君) 先生御指摘いただきましたように、この事業、平成十三年度末をもって地対財特法が失効することに伴い、終了することとなっております。他の地域改善対策特定事業と同様に、その後は同和地区や同和関係者に対象を限定しない一般対策によって対応するということになっているわけであります。
 そこで、今後のことでありますが、高等学校と大学とそれぞれ、まず高等学校につきましては、平成十四年度以降は都道府県が行う一般奨学事業の拡充により対応することとしておりまして、都道府県が経済的理由により就学困難な高校生に奨学金を貸与する場合、これに要する経費の一部について補助を行う事業を新設するため、概算要求を今行っているところであります。また一方、大学の奨学金につきましては、日本育英会の奨学制度により対応して、予算の拡充を図るというようなことで、それぞれ対応を考えております。
 いずれにしましても、事業は平成十三年度末をもって終了をするわけでありますが、その内容におきまして後退がないようにしっかりと対応していきたいと考えております。

○鈴木寛君 それでは、ぜひよろしくお願いを申し上げます。
 それでは、学ぶ意欲のあるすべての人々をどのように経済的に支援をしていくか、その基本的な考えについてお伺いをしたいと思いますが、現在、日本で十八歳以上の大学生、専門学校、大学院などを含めますと約三百五十万人の学生がいます。それぞれが大体約百五十万から二百万ぐらい年間学費と生活費がかかっておりますから、日本社会全体で見ますと大体五兆円から七兆円のお金がいずれにしても必要になってくるわけでございます。これを本人負担、それからお父さん、お母さん、要するに家族が負担をする。それから民間の教育ローン、それから民間の奨学金、それから公的な奨学金、それに授業料の補助などによってこれから賄っていかなければならないわけでありますが、この五兆から七兆というその学習活動を支援する社会全体の費用をどのような考えに基づいて社会全体として分担をしていったらいいというふうにお考えでしょうか、お聞かせをいただきたいと思います。
○政府参考人(工藤智規君) 今御指摘のように、高等教育に学ぶ学生の皆さんへの支援というのは大事なことでございまして、憲法、教育基本法で教育の機会均等をうたっております趣旨からしまして、経済的に困難な、しかも勉学意欲のある学生諸君への支援というのは、国や地方公共団体も含めて役割分担をしながら施策の充実を図っていかなきゃいけない課題だと思ってございます。
 ただ、御指摘のように、それぞれがどういう分担割合がいいかどうかというのはなかなか公定的にきっちりしたものがあるわけでは必ずしもございませんで、御承知のように、今、奨学金につきましても、日本育英会のほかに地方自治体それから公益法人、あるいは各大学等も含めて種々のところでいろんな施策を講じているわけでございますが、最近の傾向を見ますと、特に公益法人、ある程度、基金をベースにしまして援助する奨学財団が幾つかございますけれども、残念ながら、最近の低金利時代の中でその活動にかなりの支障を来している部分もございます。
 そういう意味からしまして、日本育英会を初めとして、公的な支援の拡充というのが我々に課された課題であろうかと受けとめてございます。
○鈴木寛君 私も実は私立大学で教鞭をとっておりました。近年、大変に気になることがございます。経済的な理由で退学、退籍、休学をする学生が徐々にふえていること、これは実質、表面に出ている以上にございます。そうした相談も私、受けてまいりました。我が国の場合は特に学生の多くが私立大学に通っておりますので、特にこのことは心配なわけでございます。
 例えば、あのアメリカですら私立大学の学生は全体の約三割でございますし、それからアメリカは授業料高い高いと言われておりますけれども、授業料二万ドルを超える私立大学に通う学生数は全体の四%にすぎないわけでございまして、日本の場合は約七割が私立大学に通っているという現状でございます。そして大変な負担を強いられております
 ちなみに、私立大学の下宿生の場合は学費と生活費で年間に平均二百五十四万円かかって、うち二百十九万円は家庭、家族が負担をしております。それは家族の家計の、親御さんの家計の平均可処分所得の実に三七%ということですから、二人もお子さんを大学生で下宿させたら八割が、家計の八割はもうとられちゃう、こういうことになっているわけでございまして、しかも、日本育英会から給付を受けている私立大学生はわずか一四%というありさまでございます
 こうした昨今の経済不況、雇用不安が家計を直撃をいたしまして、実質的に学ぶ意欲を持っている若い人たちの学ぶチャンスを奪っているとしたら、これは大変にゆゆしき事態だと私は考えております。
 こうした実態を踏まえまして、遠山大臣は、我が国の先ほどもお話がございました奨学金支援の拡充ということについて、具体的にどのような目標を立てて、どのような具体的な内容を考えておられて、そしてそれをどういうスケジュールで実行をされるおつもりなのかを伺いたいと思います。
 いずれにいたしましても、私は、今申し上げましたように、大変な過度な負担を家庭は強いられているわけでございまして、これは大幅に軽減すべきだと思います。加えまして、やはり学生は自立をしてきちっと勉強していくということが大事でありますから、そうしたことも含めて御所見を大臣から伺いたいと思います。
○政府参考人(工藤智規君) 御承知のように、今、育英会の貸与事業について申しますと、無利子貸与と有利子貸与事業があるわけでございますが、現在、学種別に見ますと、大学レベルでは約一七%の学生の皆さんに貸与してございます。それから、大学院レベルですと四三%余でございますが、今御指摘がありました家計の急変等によって大変勉学が困難になっている学生の皆さんについては、緊急貸与奨学金制度というのがございまして、随時それを受け付けながら家計急変等の学生諸君の支援に努めているところでございます
 それと、御指摘ありましたような、じゃこれからどういうふうに充実するのかということでございますけれども、これは先ほどの御質問にもありましたように、育英会だけではなくて地方自治体あるいは民法法人等々、各種の支援の窓口があるわけでございますが、その全体の兼ね合いではございますけれども、私どもとしては、少なくとも財政事情の許す限り育英奨学事業の拡充に努めさせていただくということで、来年度概算要求に当たりましても、無利子、有利子を合わせまして約四万五千人増の七十九万八千人の奨学生を対象に奨学金の貸与を計画しているところでございます
 なお、これで必ずしもまだ十分ではございませんが、おっしゃいましたことで私ども申しますと、目標といたしましては、十八歳自立社会の実現というのが一つの私どもの量的というよりは質的な目標でございまして、高校を卒業して十八歳になったら自立して勉学に努められるような環境の整備に努めてまいりたいと思っているところでございます。

○鈴木寛君 私は、ぜひ学生の側からもう少しきちっと実態を踏まえて御議論をいただきたいというふうに思いますが、私は、国際的に見て日本の大学生がいかに苦労しているかということについて少しお話をしたいと思いますが、現在、日本の場合は、奨学金をもらっている、これは育英会だけじゃなくて民間すべてでございますけれども、もらっている学生は二割でございます。そして、その二割の学生といえども必要額の約三割しか賄われていないというのが日本の実態でございます。
 では、海外はどうなっているかということを申し上げますと、ヨーロッパ主要国におきましては、学費、生活費が学生やその家族の家計を圧迫するという状況は全くございません。例えばドイツの場合は、大学のほとんどは州立大学でございますから原則学費は無償でございます。加えまして、生活費は、連邦奨学金法という法律があって、必要生活費と家族収入の差額をすべて全部の学生がもらえると、こういうことになっていますし、イギリスにおいても、年間の学費は二十万円で、しかも四割の学生がそれを免除されている。加えて、生活費については、希望者全員に奨学金制度というものが実現をされておりますし、その額も十分な水準になっております
 アメリカについて申し上げますと、アメリカはかなりヨーロッパと違います。私立大学、州立大学が中心でございますが、このアメリカにおきましても奨学金制度は大変充実をいたしておりまして、先ほど局長よりお話がございました日本の額の約十倍に上る五百億ドルの奨学金が総額で給付されておりますし、学生全体の七割が奨学金をもらっております。加えまして、給付型、貸与型、それから学業にマッチしたカレッジワーク、日本と違って学業と全く関係ないアルバイトじゃなくて、自分の学力増進にもつながるカレッジワークと、この三つのタイプの経済的支援制度が用意をされておりますから、これを大変うまく組み合わせて学生の皆さんは経済的な不安なく学習ができるということになっております
 各国の事情を申し上げるのはこれぐらいにいたしたいと思いますが、要するに先進諸国の中で、学生が経済的な理由で修学を断念をしたり、さらにそうした学生の学費、生活費が親の家計を圧迫したりしている国は日本以外に見当たらないということを文教科学委員の先生方にはぜひ御理解をいただきたいと思います。
 こうした諸外国の実情を踏まえまして、私は、ぜひ日本におきましても、経済的な理由による高等教育就学機会の損失をゼロにするという具体的な目標のもとに、奨学事業拡充方針を明快かつ明確に示していただきたいということをお願いを申し上げたいと思います。
 私が申し上げておりますこの考え方は決して私の独善ではございませんで、実は一九七六年に発効をいたしました経済的、社会的及び文化的権利に関する国際条約、いわゆる国際人権A規約でございますが、この十三条の2の(c)では、「高等教育は、すべての適当な方法により、特に、無償教育の漸進的な導入により、能力に応じ、すべての者に対して均等に機会が与えられるものとする」と規定されておりますし、また、同条の(e)では、「すべての段階にわたる学校制度の発展を積極的に追求し、適当な奨学金制度を設立し」云々と規定をされております。これらの規定から明らかなように、私が申し上げております目標は、国際条約に規定されている基本的人権の実現をしていただきたいということを申し上げているということを皆様方に御理解を賜りたいと思います
 実はしかし、驚くべき事実がございまして、我が国はこの条約の締結に当たり、同項の無償教育化について留保をいたしております。文部省にお伺いをいたしますが、締結国、百四十五カ国ございますが、日本以外にこの条項を留保している国があれば教えていただきたいと思います。
○政府参考人(工藤智規君) 突然のお尋ねでございますが、手元にある資料によりますと、今御指摘の条項を留保しておりますのはマダガスカルと承知してございます。

○鈴木寛君 私は、この留保をぜひ解除をいたしていただき、きちんと国際条約の実現に向かって努力をすべきだというふうに考えておりますが、いずれにいたしましても、ほかの国は、百四十三カ国は、この条約に基づきまして、既に二十年間、それぞれの国民の高等教育の無償化に向けて懸命な努力をしてきているわけでございます。その一方で、日本だけがどんどん取り残されてしまっているという実態には大変な危機感と懸念を感じるわけであります
 それから、私は、現行では余り奨学金の対象となっていない方々へも積極的に道を開くべきだと思っております。例えば、数多くの日本人がファッション、デザイン、スタイリスト、ゲーム、アート、アニメ、ミュージック、料理などの分野で世界的に活躍をしていらっしゃることをかんがみますと、現在約八%しか受給をしていない専修学校、専門学校生に対する奨学金制度の拡充にも特に御留意をいただきたいと思いますし、加えて、これからは大仁田委員のように一生涯学び続ける時代となると思います。社会人を初め年齢を問わず学びたいという意欲があるすべての方々への奨学金制度に向けて特段の配慮が必要だと思います。
 いずれにいたしましても、日本社会全体で総額、先ほどお話ございました約五千億強の奨学金をやはり急速にふやしていくということは喫緊の課題として取り組むべきだと思いますが、行革だけではなくて、こうした前向きな議論をぜひとも進めていただきたいというふうに思います。
 本日は高等教育における学生の経済的な支援に絞って議論を重ねてまいりましたけれども、学生やその保護者の方々の家計が大変に苦しんでいるということを十分に踏まえていただきまして、奨学事業の抜本的な拡充を図るために、早急にそのための検討体制を整備をしていただきたいというふうに思います。そして、日本育英会の存廃問題の決着に合わせて、同時にその奨学事業強化の具体的な成案をまとめていただきたいというふうに思います。日本育英会の廃止法だけが国会に提出されるというのは大変残念な事態でございますので、決してそういうことがないように強くお願いを申し上げたいと思います。
 私自身は、我が国における高等教育機会の均等を図ることを目的として、学習者に対し学費そして生活費も含めたそうした費用の確保を保障するために、官民あわせた奨学事業の抜本的な拡充とそれに必要な所要資金の確保、あるいは利子補給、政府保証などの実施を盛り込んだ高等教育における学習活動支援法の制定をぜひ御提案をしたいと思いますので、御一考を賜りますようにお願いを申し上げます。
 我が国は、先ほども大仁田委員が御指摘ありましたように、本日議論をしてまいりました奨学金を初め、余りにも教育に対する投資を怠ってきたというふうに思います。まさに教育投資の量的、質的な拡充は不可欠だと思います。年間の高等教育に係る公財政の支出の対GDP、GNP比率を見ましても、アメリカ一・一、イギリス一・三、フランス一・〇、ドイツ一・五に対しまして、日本は〇・七%。世界先進各国に比べていかにおくれているかということがよくわかります
 遠山大臣は三十年余り文部省にいらっしゃいました。遠山大臣を初め多くの文教関係者が教育投資の充実を図るためにこれまで懸命な努力をされてこられたことは私も十分承知いたしておりますし、本委員会には実は三名の文部大臣経験者がいらっしゃいますが、そうした先輩の皆様方の御努力にもかかわりませず、我が国の公的教育投資がドイツの半分、民間教育投資主体の米国にすら劣後しているということは大変残念でございます。これは、日本の教育を充実をしたいとの遠山大臣を初め皆様方の思いが結局従来の与党の政治力学の中でいつも踏みにじられてきたことの結果であるということは言わざるを得ないと思います。従来型の建設・土木事業には野方図に予算を投下する一方で、教育投資がいつも後回しにされてきたことは、遠山大臣が一番よく御存じだと思います。
 私も、隣の通産省にありまして知的立国日本創造のために我が青春の日々をささげてまいりましたが、二十一世紀への準備がどんどんおくれていくことへの焦りと、我々若手官僚の真摯な思いが通じない悔しさを毎日味わってまいりました。その後、大学に身を転じ、やはり懸念したとおり日本の人づくりが危機的状況にあるということを目の当たりにいたしました。そして、私は今般、参議院選挙に当たりまして、皆さんの税金をコンクリートから人づくりへというメッセージを発しさせていただきまして、私のメッセージに対し東京だけでも七十六万人という多くの皆様方から賛同と共感をいただきましたことによって、本日、この場に立っている次第でございます。
 人づくりは今やまさに国民の総意であると思います。私も大仁田委員とタッグを組みながら頑張ってまいりたいと思いますが、全国に学ぶ三百五十万人の学生と、そして将来の学生、今の学生を抱えるすべての御家庭の切なる思いを十分にお酌み取りいただきまして、これまで日本の人づくりに人生をかけてこられました遠山大臣より御決意のほどを伺いたいと思います。よろしくお願いを申し上げます。
○国務大臣(遠山敦子君) 今、鈴木委員から御指摘のことは私ども身にしみていつも感じておりまして、そのことを大声を上げて言ってまいった何十年間かでございます。
 まことにおっしゃるとおりでございまして、大変力強いものを感じますけれども、全体の財政的な状況、日本の経済停滞、そんな中ではございますが、私どもとしては、先ほど局長が説明いたしましたように、奨学金のことにつきましても、その中でも、最善とは申しませんけれども、ベターなことで力いっぱい頑張ってまいりたいと思っておりますが、これは少し息の長い活動になろうかと思いますけれども、このことの重要性については国民各位が恐らく応援していただけると思っておりまして、私どももそういう声を背後にいたしまして今後とも力を尽くしてまいりたい、先生の御指摘について十分受けとめさせていただきたいと思います。

 ありがとうございます。
○鈴木寛君 ありがとうございました。
 質問を終わります。