10・31 文部科学委員会 大学構造改革関連質疑

 

北海道大学、辻下徹氏の紹介より (下線は塚田)

 

石井委員の質問に対する遠山大臣の答弁(3003-4)で紛糾したため、議事録公開が
遅れたと推測される。
http://www.shugiin.go.jp/itdb_main.nsf/html/kaigiroku/009615320011031002.htm
行番号付
http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/01/a31-monbukagaku.html


2854 ○
石井(郁)委員 大臣がお述べになったとおりでございますけれども、もう
2855
一つ加えれば、白川博士が東京工業大学の助手時代、これは学生が行った実験
2856
だと言われているんですね。その後、そういういろいろな、アメリカの学者な
2857
どとの出会いなどを含めましてこの研究につながったということですが、白川
2858
先生自身がこう述べておられるわけです。偶然と失敗の結果生まれたとはいえ、
2859
とてもプラスチックとは思えない銀色に輝くポリアセチレン薄膜の合成や、そ
2860
れに続くドーピングによる金属化は、現在の錬金術とも言っていいだろうとい
2861
うふうに言われています。
2862
2863
 私は、ここでこういう科学史を振り返ってみても、その時代ではだれもが振
2864
り向かないような研究であったとか、非常に地道な研究であったとか、偶然の
2865
発見の積み重ねによってその研究を続けたことでつながるという部分があるわ
2866
けですね。そう考えますと、学問の自由というのをしっかり保障して、そうし
2867
た研究を支えるということがやはり国の責務だというふうに思いますが、その
2868
基本的見解、いかがでございましょうか。
2869
2870 ○
遠山国務大臣 これまでの御質疑でも再三申しておりますように、人間のす
2871
ぐれた発想あるいは独創的な研究というものを大事にしていく、これが特に大
2872
学の研究者たちの基本でありまして、そういった取り組みを十分にサポートし
2873
ていく、これも大変大事なことだと思っております
2874
2875
 殊に大学というのは、学術研究と教育といずれも大事でございまして、同時
2876
に、社会の中の存在ということも視野に入れながら、それぞれの研究者が伸び
2877
伸びとすぐれた研究をし、またそれを教育に反映し、そして社会にも貢献して
2878
いく、そのような形での大学のあり方というものを私どもとしてはサポートし
2879
ていきたいと考えておりまして、一言で言えば、基礎研究の重要性というのは、
2880
申すまでもなく大事であるわけでございます。
2881
2882 ○
石井(郁)委員 ところが、文部科学省が実際に今施策として行おうとして
2883
いるということは、私は、今の大臣の御答弁に反するような方向ではないかと
2884
言わざるを得ないわけでございます。
2885
2886
 ことし六月に出された大学の構造改革の方針によりまして、筑波大学と図書
2887
館情報大学との統合、また山梨大学と山梨医科大学の統合など、国立大学の再
2888
編統合が急ピッチで進められているという状況ですね。これは、国立大学のス
2889
クラップ・アンド・ビルドとともに、国公私トップ三十育成、この構想なるも
2890
のも打ち出していることと絡まっています。
2891
2892
 このトップ三十育成構想で、早くも来年度から実施するということで概算要
2893
求にものせているわけですね。まず、この来年の概算要求のトップ三十構想と
2894
いうのはどういうものでしょうか。これも一応基本的な構想ですので、大臣か
2895
ら御答弁をいただければと思います。
2896
2897 ○
遠山国務大臣 大学の構造改革の方針においては、非常に端的な表現であり
2898
ながら、これからの歩むべき道について方針を示したわけでございますけれど
2899
も、トップ三十という言い方は、私はシンボリックなものだと考えております。
2900
何も日本の大学の中から三十を選んで、それに重点化していくというような意
2901
味ではありません
2902
2903
 巻き返し繰り返しいろいろなところで関係者からも説明しておりますし、私
2904
もあらゆるチャンネルを通じて説明いたしておりますけれども、第三者の評価
2905
によってすぐれた取り組みを行っているようなところについては重点的にこれ
2906
をサポートしていく。それは特定の、あるいは決めた三十の大学だけというこ
2907
とではなくて、分野別に選んで、しかもそれは客観的な評価のもとに、取り組
2908
みがすぐれているというところに着目をしながら重点投資をしていく
2909
2910
 それは、これまでのようにどちらかと言えば護送船団的な行き方ではなくて、
2911
あるいは結果の平等のみを求めるような資源配分ではなくて、今日の限られた
2912
資源を十分に活用しながら、これからの日本のあり方に貢献していただくよう
2913
な大学にしていく、そのようなことをねらいにしていっているわけでございま
2914
して、そこのところは、どの大学でもトップ三十になり得る、これは常に評価
2915
をもってトップの中に入れることができるというのが一点、客観的な評価によ
2916
るものが一点、特定の大学ということではなくて、より細かい分野について見
2917
るということなど、さまざまな条件を考えているところでございます。
2918
2919 ○
石井(郁)委員 高等教育局の平成十四年度の概算要求主要事項の説明でも
2920
その点では私どもも伺っているんですけれども、トップ三十に、これは三十は
2921
固定しないという話でもありますけれども、思い切った重点投資をする、平た
2922
く言えばそういうことですね。それのために評価機関、評価も行いながらする
2923
ということですけれども、私は、これは国が特定の研究分野を育成するという、
2924
あるいは選定し育成する、その分野のみの育成を図るということになりますの
2925
で、一方で、やはりスクラップと研究分野の切り捨てということを伴わざるを
2926
得ないのではないかということが心配であります
2927
2928
 それで、少し具体的にお聞きしますけれども、評価なんですが、その選定機
2929
関を文部省内に設置するということを打ち出されているんですね。これは、来
2930
年度の概算要求には、国がその選定の仕組みとして、文部科学省に有識者、専
2931
門家で構成される審査委員会を設置するというふうに言われています。第三者
2932
機関ではないんじゃないですか。文部科学省直轄の審査委員会ということでは
2933
ありませんか。
2934
2935
 だから、なぜ国による審査委員会なのか、どういう委員会で、これはどのよ
2936
うに評価されるのか、この構想もぜひお聞かせいただきたいと思います。これ
2937
も大臣にお願いします。
2938
2939
    〔鈴木(恒)委員長代理退席、委員長着席〕
2940
2941 ○
岸田副大臣 済みません、内容ですので、私の方から御説明させていただき
2942
ます。
2943
2944
 具体的な仕組みの詳細については、目下関係の審議会等の有識者により検討
2945
中でありますが、例えば、この教育研究活動実績の具体的な評価の視点として、
2946
論文の被引用数あるいはインパクトの度合い、競争的資金等の獲得状況あるい
2947
は学会賞等々の受賞状況等、こんなものが今挙げられてはおります。
2948
2949
 そして、今御指摘の審査委員会の公平性、公正性、こういった点についてで
2950
ありますが、これはあくまでも学問分野別に専門家や有識者で構成するもので
2951
あります。ですから、文部科学省が行政ベースで配分対象を決めるのではない
2952
ということがポイントであります。文部科学省が行政ベースで配分対象を決め
2953
るのではなくて、専門家や有識者で構成される審査委員会、こうした審査委員
2954
会において公正、公平が図られるよう意を用いてまいりたいと思っております。
2955
2956 ○
石井(郁)委員 有識者と専門家でつくられたらそれが公平だ、公正だとい
2957
う保障にはならないですよ。だってこれ、どういう選定されるんですか。まず
2958
文部省が選定されるでしょう。そして委嘱もされるんでしょう。そこをはっき
2959
りさせてください。全然第三者じゃないじゃないですか。文部省の中にそうい
2960
う審査委員会を設けるということでしょう。それを伺っているんですよ。それ
2961
をはっきりしてください。
2962
2963 ○
岸田副大臣 この審査委員会の公正性、公平性については、もちろんその人
2964
選も重要なポイントでありますが、やはりこの審査あるいは評価の基準、さら
2965
には審査結果を公表する、こういった面での透明性も大変重要なポイントだと
2966
思っております。
2967
2968
 その各要素が相まって、社会から、そして国民から認められるような公平性、
2969
公正性は確保されるものだと考えておりますので、それぞれの分野でその公平
2970
性、公正性が保てるように、しっかりとこれから検討していきたいと思ってお
2971
ります。
2972
2973 ○
石井(郁)委員 私はとてもその御説明では納得できませんね。これは全然
2974
第三者の評価機関じゃないですよ。国による審査委員会、文部科学省のもとに
2975
つくる審査委員会、そういうものですよ、今の御説明だと。
2976
2977
 それは、私、大変本当に重大な問題だというふうに思うんですね。こういう
2978
ことを文部科学省が、このトップ三十構想のもとで、重点配分をするというも
2979
とでつくり出すというのは、これは今までなかったことですから、私はこの点
2980
で本当に重大な問題をはらんでいるというふうに考えているわけです。
2981
2982
 それで、この問題はやはり、「学問の自由は、これを保障する。」というふ
2983
うにうたっている憲法二十三条とも関係する極めて大きな問題だというふうに
2984
私は思うんですね。
2985
2986
 改めて、この二十三条について、憲法制定時の議会はどんな議論だったのか
2987
ということをちょっと御紹介させていただくんですが、「「學問の自由」ト申
2988
シマスルノハ、学問ヲスル方法又学問ノ内容、又学問ニ依ツテ得タル所ノ結論
2989
ト云フ面ニ亘リマシテ、国家ヨリ干渉ヲ受ケ、其ノ研究者ノナサント欲シ、定
2990
メント欲スル所ヲ妨ゲラルルコトガナイト云フ意味デアリマス」と。「保障す
2991
る。」というのは、「公ノ権力ヲ以テ其ノ伸ビテ行ク本人ノ働キヲ妨ゲナイト
2992
云フコトデアリマス」という説明がされています。「一ツノ政治的ナル権力ガ、
2993
自分達ノ行動ヲ思フヤウニ発展セシメヨウト致シマスルト、各人ガ其ノ心ノ自
2994
然ノ伸ビ方トシテ学問ヲ研究致シマスル所ニ、大イナル妨ゲヲ生ズル訳デアリ
2995
マス」と。これは当時の金森徳次郎国務大臣の御答弁ですよね
2996
2997
 私は、やはり今これを考えましても、本当にこれに反する事態が進もうとし
2998
ているんじゃないかというふうに言わざるを得ません。まさに学問の自由とい
2999
うのがなくて、国家に枢要なる学術というのを研究、教授したというのは戦前
3000
ですから、それと同じようなことになるのではないかと。大臣、御答弁くださ
3001
い。
3002
3003 ○
遠山国務大臣 先ほど来何人かの委員にお答えしておりますことをお聞きい
3004
ただけていなかったのではないかと思うわけでございます。
3005
3006
 科学研究費補助金、長い歴史を持ちながら、それぞれの研究者の発想を大事
3007
にしてボトムアップでやってきた、これは倍増しようと言っております。そし
3008
て、学問の自由を基礎として、そして現実に評価をして、そしてすぐれた研究
3009
を行っていこう、バックアップしていこうということでございます。
3010
3011
 私は、先ほどの副大臣の答弁において、これからその評価のあり方について
3012
は検討するということでございます。構造改革内閣でございますから、すべて
3013
の改革をできるだけ速いテンポで行うということを前提にしておりますので、
3014
来年度予算要求で、トップ三十といいますか、そういう重点化をしていくこと
3015
について要求をしております以上、来年度から走るわけでございますけれども、
3016
私は、国がそういう評価をするということは、私はあるべき方向ではない、で
3017
きれば、第三者機関というものはきっちりできて、そして先ほど副大臣が申し
3018
上げましたような視点も考慮しながら、それぞれの大学の発想というものを大
3019
事にしていくべきではないかと思っております。
3020
3021
 しかし、初年度からそれを達成するわけにまいりませんので、これを初年度
3022
においては、分野も限られておりますし、先ほど説明しましたような形で選ん
3023
で重点投資をしていくということでございますが、将来的なことについては十
3024
分な検討、これは中央教育審議会のところで御議論をいただいておりますけれ
3025
ども、そういう組織というものをきちんと考えて、そして自由な発想というの
3026
を原点にしながら、すぐれた研究あるいはその研究体制というものをバックアッ
3027
プしていくということにおいて、誤りなきを期していきたいと考えております。
3028
3029 ○
石井(郁)委員 ちょっと何か委員会中ざわめいたようですけれども、やは
3030
り大臣の御答弁で、先ほど来聞いていなかったんじゃないかと言われたのは、
3031
私は取り消していただきたいというふうに思います。
3032
3033
 もちろん私はずっとおりましたから聞いております。学問の自由との関係で
3034
質問したのは私が初めてだと思います。それは今まで質疑がなかったわけです
3035
よ。それから、国の審査機関のあり方の問題を私は問いかけているわけです。
3036
決してそれは、ただ評価の基準をどうするかとか、そのメンバーをどうするか
3037
という、そういう問題だけじゃないんですね。文部科学省内に評価機関を置く
3038
ということなんですよ、これは第三者機関じゃないんですよ。そのことを問題
3039
にしているんですよ。これは今初めて質疑しているんじゃないですか。これは
3040
おかしいですよ。それは私取り消していただきたいというふうに思います。そ
3041
して……(発言する者あり)ということです。
3042
3043
 重ねて、私、やはり憲法にこだわっていますが、「註解日本国憲法」には、
3044
より具体的に書いているんですよね。五つの項目がありますけれども、二つぐ
3045
らい御紹介しますが、学者、研究者はその領域における専門家です、その領域
3046
において指導的立場にあるいわば選ばれたる人であるから、通常の人を対象と
3047
し、通常の人の平均的な水準に立脚する政治や行政が、その判断に基づいてみ
3048
だりに干渉すべきではなく、国家も社会も独立性を尊重すべきだとあるでしょ
3049
う。それから、学問上の進歩及び新発見は一般の常識的な世界観から見れば奇
3050
異に感じられることが多い、常に世間の常識的な見方から反対され、場合によっ
3051
ては迫害されるのであるが、やがて真理の力によって説得せずにはいなかった
3052
ということが人類の歴史的な経験である以上、この歴史的な経験を謙虚に尊重
3053
すべきであることというふうに述べています。
3054
3055
 私は、やはりこういう立場に立っても、御答弁でも、今文部科学省がやろう
3056
としているのは、これを本当に逸脱する問題だ、この憲法に明記されている学
3057
問の自由に反することをやはりやろうとしているという点で、これは大変重大
3058
な問題だというふうに考えているわけでございます。
3059
3060
 もう一度、御答弁ください。
3061
3062 ○
遠山国務大臣 先ほどの冒頭の発言は、私は、基礎研究ないし学問の重要性
3063
についてるるお話をしてきましたという意味で申し上げました。(石井(郁)
3064
委員「取り消すんですか、どうです、基礎研究のことだけ言っていませんよ、
3065
私は」と呼ぶ)
3066
3067
 ですから、その後半のことにつきましては、それぞれの答弁の段階でお答え
3068
をしたとおりでございます。もし失礼に当たるのであれば、お許しをいただき
3069
たいとは思いますが……(発言する者あり)しかし、学問の重要性については、
3070
私は信念を持ってこれまでもお答えをしてきたということを申し上げてまいり
3071
ました。
3072
3073 ○
石井(郁)委員 やはりすれ違っているわけですよ。基礎研究については、
3074
午前中の審議、その他で他の議員にいろいろ御答弁されたと思いますけれども、
3075
私、基礎研究のことだけ述べていませんよ。やはり私の質問をまともに受けと
3076
めていただきたいですね。その上で御答弁いただかないと、これは困るわけで
3077
す。だから、そこは重ねて、最初の冒頭の発言部分は取り消していただきたい
3078
というふうに私は思います。委員長にお願いをいたします。
3079
3080 ○
高市委員長 速記をとめてください。
3081
3082
    〔速記中止〕
3083
3084 ○
高市委員長 速記を起こしてください。
3085
3086
 石井委員及び遠山大臣に申し上げます。
3087
3088
 現在、今ほど理事の皆様もお話し合いになられましたけれども、別の議員に、
3089
自由党の別の議員に、別の議員の質問に対して答弁があったとしても、ここは、
3090
それぞれ各党の国会議員が自由に質疑をする場でございますので、以前に答弁
3091
があったとしても、これは丁寧にお答えをいただきたいと思います。大臣には、
3092
委員長としてその点、申し上げます。
3093
3094
 そして、議事を、議事録をもう一度精査しつつ、先ほどの大臣の発言、取り
3095
消していただく、いただかないということについても、理事会の扱いにさせて
3096
いただきたいと思います。石井委員、よろしいですか。
3097
3098
 それでは、質疑を続行させていただきます。石井郁子君。
3099
3100 ○
石井(郁)委員 よろしくお願いします。
3101
3102
 私、申し上げているのは、やはり国が学問研究に介入してはならないという
3103
その原則をしっかり踏まえていただきたいということであります。
3104
3105
 その点では、この委員会でも名前がたびたび出ておりますけれども、ノーベ
3106
ル化学賞を受賞された野依名大教授はいろいろなことをおっしゃっていますよ。
3107
選考機関がどの分野を重要と認めるかは極めて主観的なことだと。先ほどノー
3108
ベル賞三十人という問題がいろいろありましたけれども、そういう批判もあり
3109
ます。白川氏も、日本の科学分野の学術研究水準は世界に引けをとらない、他
3110
の分野でも能力のある人はいる、よい論文を書いたからといって世界に評価さ
3111
れるわけでもないというふうに述べていらっしゃるわけです。
3112
3113
 だから、重ねて、国が評価をするということは本当に慎重でなければいけな
3114
いし、そういう意味での、評価して学術研究を統制するというようなことはや
3115
はり絶対やってはいけないことだということを強調したいわけであります。
3116
3117
 そこで、今研究者の間からいろいろ声が出ていると思います。その点で伺う
3118
のですが、七月十一日には国立遺伝研究所、国立極地研究所など十四の大学共
3119
同利用機関の長の皆さんが総理大臣あてに要望書を出されていますね。「わが
3120
国の最近の科学技術政策について 基礎的科学研究の推進の必要性」というこ
3121
とで出されています。
3122
3123
 こういうふうになると、基礎研究なんですけれども、基礎的科学諸分野や基
3124
礎研究の強化を怠って我が国の科学と文化及び科学と技術の土壌を損なうこと
3125
は何としても避けなければなりません、さもなければ創造的科学技術立国の種
3126
は芽を出したとしても大きく育つことはできない、このことを懸念するとおっ
3127
しゃっていらっしゃいます。そして、今の状況を憂慮して、理系、文系などの
3128
分野を超えて平成十四年度予算等当面の施策において基礎的研究の推進に十分
3129
な配慮をされることを望むとしています。
3130
3131
 こういう声にやはり文部科学省がまずこたえるべきだというふうに思います
3132
が、御見解、いかがでしょうか。それは大臣にお願いします。
3133
3134 ○
遠山国務大臣 今御指摘のペーパーで述べられております基礎研究の重要性、
3135
これはもう言うまでもないと思いますし、この拡充については私どもは力を十
3136
分注いでまいりたいと思います。
3137
3138 ○
石井(郁)委員 同じように国立大学協会からも声が上がっておりまして、
3139
大学の構造改革の方針についてですが、この内容については、本協会などとは
3140
何らの相談もなく文部科学省が一方的に発表したものである、大学の現場では
3141
無用の混乱を生じている、こういう指摘がされています。
3142
3143
 私は、今までも、大学行政というか、学術行政が現場の大学の人たちの声を
3144
いわば十分聞くことなく、本当に上から一方的に行われたというのも、ちょっ
3145
とかつてないと思うのですね。だから、こういう一方的な、権力的なやり方と
3146
いうのは、本当に大学行政、学術行政になじみませんし、避けるべきだと思い
3147
ます。
3148
3149
 この意味で、トップ三十構想、来年度の予算をもう要求していらっしゃるわ
3150
けですけれども、私はストップをして考え直すべきだというふうに思いますが、
3151
御答弁、いかがですか。
3152
3153 ○
岸田副大臣 先ほど来御議論いただいております大学構造改革、そしてトッ
3154
プ三十の議論がありますが、先ほど大臣から申し上げましたように、限られた
3155
資源を最大限どう活用していくかという発想のもとに再編統合の議論があった
3156
り、またトップ三十もある面ではそういった発想も大きなポイントだというふ
3157
うに思っております。
3158
3159
 しかし、大学の構造改革、大学の改革ということを考えますならば、これは
3160
トップ三十、研究だけが大学のすべてではないと思っております。大学には研
3161
究という重要な役割もあるわけですが、一方で教育という部分もありますし、
3162
また組織運営という面でも重要な仕事があるわけであります。
3163
3164
 ですから、個性輝く大学をつくっていくということの中で、そのトップ三十
3165
というのは一つの要素だとは思っていますが、教育面で大いに大学の特色を出
3166
していく、そういった面で生きていく大学もあること、これは大いに期待され
3167
るところでありますし、いろいろな見方そしてポイントで大学というものを見
3168
ていき、その中でトータルとして大学全体が活性化していく、こういった考え
3169
方が大切だというふうに思っております。
3170
3171
 トップ三十というのは大切なポイントでありますが、大学改革のすべてでは
3172
ないということ、このことはもう一度確認しておきたいと思います。
3173
3174 ○
石井(郁)委員 この問題は、国立大学だけではなくて、実は私学にも大き
3175
くかかわってくる問題がありまして、来年度の概算要求の中には、私学の予算
3176
で私立大学の教育研究高度化推進の特別補助ということで、これも文部省内に
3177
審査委員会を設けて国からの特別補助ということで行う重点化なんですね。
3178
3179
 私学については、今までサポート・ノーコントロールということで議論があっ
3180
たりして、直接補助ではなくていわば間接補助ということを原則にして進めら
3181
れてきたと思うのですが、今回それがまた非常に大きく変わったのじゃないで
3182
しょうか。
3183
3184
 私は、私学の補助の問題も、私学振興助成法第十一条でも事業団を通じた間
3185
接補助という規定があるのですけれども、それも今回踏み破ってというか踏み
3186
越えてというか、直接補助に国として、文部科学省として乗り出そうとしてい
3187
るというのは非常に重大だというふうに思うのですが、私立大学の特定分野の
3188
育成にも乗り出そうとしているという問題についてもう一点伺って、もう時間
3189
が参りました、質問を終わります。
3190
3191 ○
岸田副大臣 先生からの御指摘、私立大学教育研究高度化推進特別補助とい
3192
う名称で今平成十四年度の概算要求において要求している部分の御指摘だと存
3193
じます。
3194
3195
 この部分、三百九十三億円の金額を、すぐれた教育研究を実践する卓越した
3196
大学院への支援ですとか、あるいは先端的、先導的研究を初めとする科学技術、
3197
学術研究の推進、あるいは学部における教育の質の向上や教育システムの改善、
3198
こういった点に重点的な支援を行うということで要求をしているわけです。
3199
3200
 そして、今御指摘がありましたように、これを間接補助ではなくして直接交
3201
付にしている、この点についてでありますけれども、私立大学等経常費補助金
3202
の交付は、もう先生御案内のとおり日本私立学校振興・共済事業団を通じた間
3203
接補助として実施しております。その理由として、私学の自主性の尊重や私学
3204
事業団における私学振興施策を総合的、効率的に実施すること等を政策的に判
3205
断した結果だということであります。
3206
3207
 このことは大変重要なことだと思っておりますし、これからも尊重していか
3208
なければいけないと思っておりますが、今冒頭に申し上げました私立大学教育
3209
研究高度化推進特別補助、これは先ほど申し上げましたような目的、ねらいを
3210
持って予算要求をしているわけですが、この補助の性格上、例えば研究設備等
3211
と一体化した配分が必要になってきます。これは、研究設備等は従来も直接に
3212
補助を行っているわけでありまして、こうした予算と一体的に配分をするとい
3213
うようなことを考えた場合に、この直接補助という形をお願いしたということ
3214
でございます。
3215
3216
 私立学校振興助成法第十一条においては、日本私立学校振興・共済事業団を
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通じて行うことができると規定されておりまして、国が直接交付を行うことも
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予想されているわけであります。こういったあたりも勘案し、なおかつこの予
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算の中身、この研究設備との一体化というポイントを考えまして、こういった
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形で直接交付にさせていただいたということでございます。
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