1 大学改革・山口大学改革・経済学部改革についてー経緯

*国立大学法人法案、山口大学中期目標・中期計画案、山口大学の制度案への疑問点

 

2 政府の「改革」動きについてー感想

 


 

1 大学改革・山口大学改革・経済学部改革について−経緯

 

 (初稿は01/6/26作成し、7.9学科会議で「ここ2,3年の経済学部の将来像についてのメモ」として、討議資料として紹介。10/4加筆。10/7、10加筆。2003・5・14加筆。2004・6・5加筆。)

                                                                                                 塚田

目次

 

T これまでの経緯

新制大学から独立行政法人化(国立大学法人化)案まで

0−1)新制大学創設期・山口大学創設期

0−2)改革期

1)行政改革と国立大学

2)少子化と国立大学

3)国際競争力と大学・国立大学

4)独法化国立大学法人化への動きの進展

5)独法化の動きの急展開 2001/6/14・・経済財政諮問会議と遠山プラン

 調査検討会議最終報告

 法人法案

 中教審・高等教育グランドデザイン

  論点整理

主な意見

高等教育の将来構想(グランドデザイン)に関するこれまでの主な意見


   (以下、Pt2) 山口大学中期目標・中期計画案、山口大学の制度案への疑問点

U 山口大学と経済学部のこれからの改革

V 私見 

 

T これまでの経緯・・新制大学から独立行政法人化(国立大学法人化)案まで

 

0−1)新制大学創設期・山口大学創設期

 

・1949年5月 国立大学設置法制定 69新制国立大学発足 

GHQ方針:大学の都市集中を避け教育の機会均等を実現するため各府県に少なくとも一国立大学設置)

・同 山口大学創設 (文理教育、経済)

・1964年 山口県立医科大学を山口大学医学部に移管

 

0−2)改革期

 

 ・・この間省略・・

 

・1996・4〜 教養部解体・分属共通教育体制へ(全学出動)

 理由:大綱化・・(早くから専門との相互乗り入れ方式、楔形方式をとったほうが学生にとってもよい、との理解。)

 

1)行政改革と国立大学

 

 1997・10・17 文部大臣所信 「国立大学の独法化に反対」

(町村信孝文部大臣が17日の閣議後の記者会見で配布、http://edugeo.miyazaki-u.ac.jp /reform/r770.htmlより)

 

 国立大学を独立行政法人化することについては、大学の教育研究の特性に鑑み、以下のような問題点があり、反対である。

(1)独立行政法人は、定型的な業務にこそふさわしく、それに応じた短期的で、しかも効率性に重点を置いた運営が想定されているが、大学の教育研究は長期的視点に立って、多様性をもつことを本質とするものであり、大学の教育研究にはなじまないこと。

(2)独立行政法人のねらいは、効果的な業務の実施にあるが、文部大臣が3〜5年の目標を提示し、大学がこれに基づき教育研究計画を作成、実施する仕組み、及び計画終了後に、業務継続の必要性、設置形態の在り方の見直しが制度化される仕組みは、大学の自主的な教育研究活動を阻害し、教育研究水準の大幅な低下を招き、大学の活性化とは結びつくものではないこと。

 また、効率性の観点から一律に大学を評価することは、各大学の特色を失わせ、現在進めている大学の個性化に逆行すること。

(3)現下の厳しい財政状況の下で独立行政法人化する場合、安定的な研究費、人件費等の確保の保証がなく、その結果、独自の資金を有しない我が国の大学においては学術研究水準が低下し、科学技術立国を目指す我が国の発展は望めないこと。

 

 1997/12 行革会議最終報告 (国立大学関連部分)

 

ア 国立大学改革の基本的な方向 (下線引用者)

 国立大学は、国際化、少子化、高齢化、情報化、産業構造の変化など社会が大きく変化する中で、教育研究の質的向上組織・運営体制の整備各大学の個性の伸長産業界、地域社会との有機的連携教育研究の国際競争力の向上等に積極的に取り組むことが必要になっている。

イ 具体的な大学改革の方策

a 国立大学の自主的改革の推進と情報公開、評価システムの充実

 国立大学の多様性にかんがみれば、各大学が主体性と責任を有し、競争的な環境の中で、特性を生かしつつ諸課題に取り組んでいくことが求められる。このためには、大学ごと情報公開と透明性の確保、評価システムの充実をさらに推進する必要がある。 [多様性、とは?]

b 組織・運営体制の整備

 各大学が主体性と責任を有し、組織として適切な意思決定を行い、実行に移すためには、組織・運営体制の整備が不可欠である。[急いでいる、ことはわかる。]

 具体的には、外部との交流促進も含めた人事制度及び会計・財務面での柔軟化を図る必要がある。この際、高等教育行政と各大学の関係を見直し、各大学の自主性を高めるための方策として、外部資金の積極的導入国費投入・配分基準の明確化・透明化競争的資金の充実等についても早急に検討を行う必要がある。 [教育研究の維持、発展のために部分的に正しいことも含まれる。難問は全体の図式としてどうかということ。]

c 大学組織の権限と責任の明確化、事務組織の見直し

 学長、学部長などの執行機関の管理運営機能の強化を図るとともに、評議会や教授会などの審議機関についての在り方を見直し、執行機関との間の権限と責任の明確化、意思決定手続の明確化を早急に行う必要がある。また、事務組織の簡素・合理化、専門化についても、早急に整備する必要がある。 [管理運営強化はを受け入れれば、そこから自然に結論される。2004年の独法化以後8年たった2012年時点では、実行された大きな、またおそらくはたった一つは財政の切り詰め。結果としては財務省の望む方、運営費交付金の切り詰めに進んだ。事務組織の合理化もそのしわ寄せが教員にゆく(たとえば教員が就職関連資料の窓口となること)ことで、最も重要な教育研究のための時間、力をそぐ結果となった。…ただこれは国民全体が不況で困っているからという点を背景とするので、それも含めた改善方法を提案せねばこの方向が進められざるを得ない国民の理解状況があろう。]

ウ 大学改革の進め方

 国立大学については、上記のとおり、高等教育行政の見直しも含めた、組織・運営の在り方の改革を早急に推進する必要がある。

さらに、独立行政法人化は、大学改革方策の一つの選択肢となり得る可能性を有しているが、これについては、大学の自主性を尊重しつつ、研究・教育の質的向上を図るという長期的な視野に立った検討を行うべきである。また、大学の機能に応じた改組・転換についても、併せて積極的に検討する必要がある。 [この留意点、目的は達成されているか?これに対する政府の自己評価が必要である。つまり、独法化によって、長期的視野から見た研究・教育の質的向上はどのように実現しているか?]

 

2)少子化と国立大学

 

 入学者数の変化の見通し

 

  19981026大学審新答申

 

 1996年度、80万人。

  2009年度以降の大学・短大の入学者予想は70万人程度。・・つまり、96年度より10万人減となる。ここで全入可能となる。

 

   なお、その中間地点である200151日現在では、                        

   大学             649校  274万人  

   短大             572校   33万人    307万人 一学年平均 77万人

   大学院 479校  21万人

   専修学校 3551校 75万人

   (出所:http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/index.htm

 

 

3)国際競争力と大学・国立大学 [これは経済的豊かさ維持のために大学はもっと役立て、との視点]

 

 3−1 大学審答申に見る大学批判

 

 1999・10 大学審答申 競争的環境の中で個性が輝く大学へ (以下参照)

 2000・11 大学審答申 グローバル化時代に求められる高等教育の在り方に

いて」、「大学設置基準の改正について」、「大学入試の改善について (以下参照)

                          

 1998年答申 要点

 2000年答申(98年の具体化)

目標:

1「人類にとって真に豊かな未来の創造」

2「国際的な通用性」(以上「はじめに」)

 

 学術研究の進歩・・加速

 国際競争力の強化」が求められる

 ↓

 だが、まだ大学等に対する社会の側からのさ

まざまの批判がある

 ↓

 多様化・個性化」 [その内容?]

 卒業時における質の確保

方法:学部 教養教育重視

外国語*4情報*5科学  +*9

       専門分野の基礎・基本重視

広い進路選択幅 *2実体験・職業観*3

   大学院  専門性向上

専門大学院充実*1

+*10?

      国際的競争力育成

学生*6・若手教員海外派遣促進*

大学間交流*7

     [これは国民の合意↓問題は中身]

   柔構造化→社会の要請に応える

生涯学習ニーズ*8→単位累積加算

               

ト学生

        学長指導力強化*

実現

      予算

欧米並み公的支出確保?

資源配分に差をつける*

 

個性化の三つの指針(広中学長の理解、『90年史』)・・アジア地域創造

アジアを中心にして世界を展望する国際化」、「裾野の広い地域産業の振興と多様な地域文化の振興」、「純朴な創造マインド

 

 3−2 大学審答申の問題点

 

 3−2−1  98年大学審答申

 

 改革の必要性の説明がない。下記のみ。[大学教育の、日本の教育の、日本の社会の、目指すもの、は何か?]

 

 大学等に対する社会の側からのさまざまの批判はいまだに完全に払拭されてはいない

  だが、その内容は述べられていない。今、大学の本来の任務に照らして、どこがどのように改善されるべきなのか。分析なしの結論提示である

 「国際競争力」、「国際貢献」などの言葉が出てくるが、それはこれまでも同様にあった。これらの言葉を羅列しただけでは説明になっていない。

 

 3−2−2 00年答申

 

 同様。

 

 3−3 両答申の小目標(具体的目標)

 

 大目標は不明確なまま、種々の目指すべき「小目標」が出てくる。

 

 以下の二つの答申中の小目標のうち、点線で示した目標部分は特に国民の意見をよく聞き、慎重な検討が必要なものであろう。中でも現場の教員、学生、親からの意見を聞く必要があろう。だが、現状では学生、親からの、また広く国民からの意見聴取はほとんど行われていない。教職員からのそれは国立大学では行政ルートを通じて行われてはいるが、当面、現場では02年の1月までに再編・統合案を出さねばならないというスケジュールで頭がいっぱいであり、こうした諸問題を全般的に熟慮する余裕を持ちえているかどうかやや疑問である。

 

 3−3−1 98答申の小目標

 

 教育目標

 

課題探求能力の強化 → 広い視野、総合的判断 →学部 基礎重視   

                                                     院  専門性向上

卒業時の質確保 → 自習強化、履修登録上限、教員研修、教育評価、

高度専門職業人要請の院を増設

 

入学定員・・国民の判断による。(文部省) → (未解決)[2012年時点、まだ国民の意識にはあまり上っていないのでは?]

 

 3−3−2 00年答申の小目標

 

 教育小目標

 

教養         倫理観、責任感

        外国語、情報読み書き能力、科学読み書き能力

広い視野             進路選択幅拡大→? 学生海外派遣促進

職業観        (教員の能力必要)

柔軟性        社会の要請に応える 学部、学科の枠を越えることも

生涯学習             ニーズに応える

                         社会人学習環境充実、単位累積加算制度、パートタイム学生

 

・インターネット授業

 

国際交流   ケルンサミットで、学生・教員の国際交流の重要性が指摘(合意、であろう)された (広い視野の目標と重なる)

                        → @教育制度の国際的整合性が必要

                        → A教育研究の国際的競争力(?)を高めよ

                           →留学生受け入れ推進

                           →大学間交流促進

                           →開発途上国への援助事業

 

 研究小目標(←国際的競争力)

 

評価による資源配分

専門大学院充実

最先端の研究        → 組織運営体制改善 → 

                                    → 教員流動性向上(なぜ?)(効率性高まる? 公正性を侵さないか?) 

                           → 講座等柔軟化

欧米並み公的支出確保

 

 (付)自民党文教部会の考え (00・5・9)

 

 自民党文教部会でも日本の大学の問題点を述べる(たとえば、わが国科学技術の遅れ国際的な評価・・満足できる状況とは言いがたい、「個性や特色を失いつつある教育面がおろそかになる面があった等)が、その根拠は具体的に示されていない[たとえばこの時点での10年間の不況、停滞の原因論なし。たとえば、技術停滞か、需要の不足か。]

 そして直ちに次のような結論に至る。大学審答申と同様の論理展開である。

・選別と淘汰 学長権限強化、任期制促進

国立大学は大学院の重視へ 

地方国立大学、一層強化

 

4)独法化国立大学法人化への動きの進展

 

1999年4月 閣議決定

 

 「国立大学の独立行政法人化については、大学の自主性を尊重しつつ大学改革の一環として検討し、平成15年までに結論を得る。」

 

 1999年 文部省 風当たりが強い

  山大FD研修文部省高等教育局合田哲雄氏

 

 「私立大学からの風当たり」、経済戦略会議でも独法化民営化を議論。大学審議会でも・・教育と研究が国民の支持を得られなければ大学存続への・・支持は得られない)(ただ、ここでも具体的な根拠のある攻撃であるという説明はない。)[国民の支持、というときの国民とは誰か?]

 

 諸意見(社説)

 

 1999年8月18日の日経

 大学は産業界のためにあるものでもなければ就職のためにあるものでもない大学はこれからの時代に人々がいかに生きるべきかの指針を示す機関と考えたい。次の時代の文化を作り出し発信するのが大学といってもいい。独立行政法人化にしても評価にしても安易に応用研究とか評価にしても論分数や特許出願件数などで測っては良くない。社会が大学に何を求めるかという理念をきちっとすべきである[まさにここが不足している、日本は。当事者の私たちも?]

 

 1999年8月29日の読売

 教育研究にこの法律が定めている数量的な目標がふさわしいとは思えない

 

 →この際大学は社会に積極的に打って出て社会に大学について考えていただく必要がある。(上記、文科省、合田氏)

 

 →[大学人が大学のあり方を社会にもっと訴えて欲しいとの希望は、後掲の01年の最近の新聞社説にも多く見られる。][重要!かつ、不足!]

   ↓

 ・・・・・・・(ここでの大学人の働き掛けが弱かったのか。そもそも大学人もこの理解が弱いのか。社会とは、教育とは、大学教育とは?について。)

 

2000・7 文部省 工夫した独法化やむなし」 [妥協の道に入る]

 合田隆文大学課長(筑波公開研究会)

 

 「世界各国を見てもおよそ大学というものをすべて民営化してしまうと行ったことはできもしないし適当でもないと考えられている。」

 「独立行政法人化・・入り口での目標、計画の設計と・・出口での評価システムがセットになっており、入り口と出口については国がきちっと管理をする。」

 「(通常の独立行政法人は?)法人としての責任・・誰が責任をとるのか・・法人の責任は長が負う・・。これに対して文部省の立場としてはその独立行政法人の一般的な制度をそのまま適用するというのはよろしくない。・・目標・計画の設定のところで各大学の自主性を尊重する、評価は各大学に任せるというわけには行かないが大学人の手によって評価をする・・。法人の長の任命・解任についても大学の意向を尊重する・・。」

 いろんな分野で競争自己責任が叫ばれておりその先に待っている社会の方向について本当に責任を負いそういう社会を望むということで皆さんがそういう道を選択しておられるのかどうかについて私は個人的には危惧の念を持ってはいるしかし現実問題としてはそういったような常識の中で今後の大学運営は考えていく必要がある。

 世間が大学に求める中身が変ってきている・・学部教育・・一つは基礎学力で一つは教養・・。大学院に求めるものは・・ポイントは即戦力である。三番目には公的資金に対する投資効果といったようなものを求めていてそれが昨今のランキングやりにつながっているのではないか。

「世間の常識と大学の常識との極端な乖離を何とかする必要がある・・普通の人に話をして常識的に説明がつかないなと思うことは直ちにやめる・・ことが・・必要だ。」(「私どものところにいろいろな国立大学の方からご相談がある。例えば経営だとか金融だとか言った新分野の人材養成をしなければならないと工学部の先生が言ってみえる。お宅の大学には立派な経済学部があるでしょ、経済学部でできないですかと尋ねると、うちの経済学部では無理です、彼らはやるはずがありません、だから我々がしなければならないのですというお話なのだが、それはふつうの人が聞くとやはりおかしいのであって、もしそうだとするとそういう経済学部はやめていただくと言うことを大学として考えるのがふつうだという風に思われる。」)

 

2000年12月1日 閣議決定 行政改革大綱

 

「国立大学及び大学共同利用機関等の独立行政法人化については、平成15年までに結論を得ることとされていることを踏まえ、大学等の自主性を尊重しつつ、大学改革等の一環として検討するため、平成13年度中に有識者等による専門的な調査検討の結果を整理する。」

 

5)独法化の動きの急展開 2001/6/14・・経済財政諮問会議と遠山プラン

 

 2001・6・14 国立大学学長会議 遠山プラン

 

 (経済財政諮問会議の大変なスピードに対応するため、学長会議の結論を待たずに示した。(遠山))→文部省としての国立大学生き残り案(再編統合、独法化と競争、外部評価)を提示 (教員養成系単科大などを県域を越えることも視野に再編統合。そして国立大学法人に早期移行。その上で評価による資金の効率的・重点的配分。国公私対象の競争的資金を増やす。「分野別にトップ30大学育成(遠山)」。「GDPに占める教育費の比率を高めたい(竹中)

 

 6月20日の諮問会議の方針

 

 国立大学は法人化して、自主性を高め・・国際競争力のある大学を目指す。」「大学教育に対する公的支援については機関補助に世界最高水準の大学を作るための競争という観点を反映させる。 

 

 6・14 遠山プラン発表時、文科省高等教育局長の勇み足(文部省内部での混乱)

 

 同日国立大学学長会議での工藤高等局長の発言

 国立大学に対する批判や評価は残念ながら目を覆うばかりのものがある。IMDによる『世界競争ランキング』の大学教育の評価で日本は49番中49番であることを真剣に受け止める必要がある。(文教ニュース6月25日号)

 このランク付けは49カ国の4000名ほどの会社役員たちへのアンケートによっているが、その調査方法が信頼できるものかどうか、当の文部大臣から疑念が示されていたものだった。「IMDの調査結果のようにそれはあまり真実を反映していないのではないかと思われるような調査結果も流布されたりしております。」((5月の衆院文教科学委員会での答弁)

 (なお、同じIMDの調査(1995)secondary school enrollmentの項目では日本は2位となっている。また、educationaol achievement, TIMSS average achievement of pupils, eighth grade では、数学では2位、科学では3位である。このような学力を持つ子供たちが、たとえ大学である程度学力が追いつかれたとしても49カ国中49位に落ちるという返答結果はあまりありえないのではないか。(日本の大学教育は全体としてインドネシアよりタイより中国よりコロンビアより アルゼンチンよりスロベニアよりブラジルより南アフリカよりトルコよりポーランドよりマレーシアよりチェコよりフィリピンよりチリより韓国よりベネズエラより劣っているというのだが、にわかには信じがたい。・・塚田) 

 

 2001/9/22 文科省事務次官、小野元之氏(日経)・・遠山プランが唐突であったとの批判、現場の混乱に対して

 (遠山プラン、競争、経営、評価、そしてトップ30大学について「唐突な発表で、国立大学関係者に無用の動揺が広がっている」との批判があるが)「事実なら文部科学省としても率直に反省したい。」(だが)「この構造改革プランは、これまで・・長い間議論し検討してきた大学改革の流れの一つの集約でもある。」

 (これまで)「大学審の発足以降様々な改革が提案されてきたが、・・多くの改革が実行され、各大学は確実に変化してきている。・・しかし、・・経済の停滞が長引き、大学に対する国民の期待がかつてない高まりを見せる今こそ、スピード感を持って、目に見える形で大胆に改革を進めなければならない。そしてそれゆえにこそ[文科省が?]きちんと説明し、大学関係者や国民に理解される努力をしなければならないと考えている。」

 (研究はすでに高水準にある。あとは、産学連携と学生の修学指導を強化してほしい。)

 「・・日本の大学の力は伸びている。論文の質や引用数など世界に冠たるものがある日本の大学の先生は教育研究についてはある程度自信を持っていいだが、大学は技術移転機関を増やし、企業との共同研究や産学連携を進めなくてはならないにも関わらず、不十分な面もあり、日本の企業の評価は厳しい一方で大学は入ったら勉強しないという見方が多いのも事実だ。」

 「一部財界には民営化しろという意見が強くあるが、組織や体制としての民営化ではなく、徹底して民の運営になればいいのだと思う国立でなくてはできない分野もある。」

 

 諸意見(社説など)

 

 2001年9月29日の毎日(文科省の調査検討会議の中間報告について)

 大学人は今こそ、積極的に声を上げてほしい

 

 同、10月1日の朝日

 国立大学制度をどう考えるかは、専門的で難しい。大学の中でさえ関心を持たない人が多いと聞く。・・まず学内での検討と活発な議論が必要だ

 

 文部省も意見募集開始

 2001年9月28日、文科省からの意見募集のお知らせ(ホームページから)

 文部科学省では、国立大学を法人化する場合の法令面や運用面での対応など、制度の具体的内容を調査検討するため、平成12年7月に有識者による調査検討会議を設置し、検討を重ねてきたところですが、このたび、検討結果の中間的な整理として、「新しい「国立大学法人」像について(中間報告)」をとりまとめました。

  つきましては、本件について広く皆様から御意見をいただくべく、下記の要領で御意見を募集いたしますので、忌憚のない御意見をお寄せいただきますようよろしくお願いいたします。

   今後、皆様からいただいた御意見を参考にさらに検討を重ね、今年度中に最終報告としてとりまとめる予定です。

 

2002・3・22

 

 この間の大学改革に関する政府の動きは次のようであった。

 

 文科省 調査検討会議の最終報告発表 02年3月

              (http://nuufs.org/dokuhou/hihankentou.html)

     同会議を賢人会議で了承   02年3月 予定

 国大協 同報告を了承?                          02年4月 予定

 国大協 第8常置委員会                          02年3月1日

              評価・授与機構(NIAD)の評価報告案を批判→同機構は評価公表の際、この批判に答えるか?(*1)

 

 調査検討会議の案は、中期計画の作成への文科省の介入、大学経営への外部者の参加など、従来の大学のあり方を大きく変える内容となっている。

 1998年の大学審議会答申に基づき、2000年4月に学位授与機構に大学評価の機能が付け加えられた。すでにそのもとで評価が始まっている。

 

(*1)4・3時点でHPを見ると公表されている。だが批判に答えていないように見える。第8常置委員会はこれをどう見ているか?  

 

2002年3月26日 

 

文部省調査検討会議 最終報告

 調査検討会議の最終報告のポイント http://www.jtu-net.or.jp/upi/document/renraku/no8/index.htmlより)

(日本教職員組合 国立大学・公的機関交流センター 作成資料)

 

  「国立大学等の独立行政法人化に関する調査検討会議」最終報告案

   「新しい『国立大学法人』像について(案)」についてのポイント2002.3.7)日教組UPIセンター

文部科学省調査検討会議(連絡調整委員会)のまとめた最終報告案について

法人化にともない国立大学教職員の身分は非公務員型に

文部科学省「国立大学等の独立行政法人化に関する調査検討会議」最終報告案
――「新しい『国立大学法人』像について(案)」(2002..6 第8回連絡調整委員会)

最終報告案の概要

はじめに

I
 【基本的考え方】

1.検討の前提として

2.検討の視点として


II
 【組織業務】


III
 【人事制度】


IV
 【目標評価】


V
 【財務会計】


VI
 【大学共同利用機関】


【関連するその他の課題】・・・以下の課題について別途速やかに検討することが必要。

現行の大学共同利用機関が分野を超えて連合する可能性及び「機構」の具体的あり方 (以上p63)

 

 2002年8月 全大教:調査検討会議報告の批判

  → 全大教による批判(0208)強調付き)

 

 2003年2月 内閣・文科省:国立大学法人法案を国会に提出

「国立大学法人法案」関係6法案の概要 (2003/02/28文部科学省ホームページ報道発表一覧)(以下、山口大学HPより転載)

・国立大学法人法案 (国会提出日 平成15228日)

 ・要綱 (PDF:86KB

 ・法律案 PDF:265KB

 ・理由 PDF:8KB

 ・参照条文 PDF:241KB

 

要綱中の「目的」・・・この法律は、大学の教育研究に対する国民の要請にこたえるとともに、我が国の高等教育及び学術研究の水準の向上と均衡ある発展を図るため、国立大学を設置して教育研究を行う国立大学法人の組織及び運営並びに大学共同利用機関を設置して大学の共同利用に供する大学共同利用機関法人の組織及び運営について定めることを目的とすること。(第一条関係)

・理由・・・「大学改革の一環として」。(とあるのみ。)

国会経過 提出時法律案

国立大学法人法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案 (国会提出日 平成15228日)

 ・要綱 PDF:26KB

 ・法律案 PDF:237KB

 ・理由 PDF:9KB

 ・新旧対照表 PDF:729KB 

 ・参照条文 PDF:538KB

国会経過 提出時法律案

(山口大学 現在の関係ページ→http://web.cc.yamaguchi-u.ac.jp/~hojin/gakunai/

 文科省 現在の関係ページ→http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/houjin/houjin.htm

*国立大学法人法案の概要 

(山口大学法人化準備事務室作成のPDFからのコピー。細部で若干の誤記があるかもしれない。)

 

T 総則

1 「国立大学法人」とは,国立大学を設置することを目的として,この法律の定めるところにより設立される法人をいう(独立行政法人通則法に規定する独立行政法人ではない(第2条第1項) )。

2 国は,この法律の運用に当っては,国立大学及び大学共同利用機関における教育研究の特性に配慮しなければならない(第3条) 。

3 国立大学法人(89法人)並びに国立大学及び大学共同利用機関法人(4法人)の名称を定める(第4条及び別表第1) 。

4 政府からの出資について定める(第7条) 。

U 組織及び業務

(役員)

5 国立大学法人の役員として「学長(=法人の長「理事(法人ごとに数を定める) 」), 」及び「監事(2人)を置く(第10条及び別表第1) 」。

(役員会)

6 学長は,次の事項について決定する際には,役員会(学長及び理事で構成)の議を経なければならない(第11条第2項) 。

@ 中期目標についての意見及び年度計画に関する事項

A この法律により文部科学大臣の認可又は承認を受けなければならない事項

B 予算の作成及び執行並びに決算に関する事項

C 当該国立大学,学部,学科その他の重要な組織の設置又は廃止に関する事項

D その他役員会が定める重要事項

(経営協議会)

7 国立大学法人の経営に関する重要事項を審議する機関として「経営協議会」を置く。

(第20条第1項)

8 経営協議会は,

@ 学長

A 学長が指名する役員及び職員

B 教育研究評議会の意見を聴いて学長が任命する学外有識者(=学外委員)で構成され,Bの学外委員が2分の1以上でなければならない(第20条第2項及び第3項)

9 経営協議会は,

@ 中期目標についての意見に関する事項のうち,国立大学法人の経営に関するもの

A 中期計画及び年度計画に関する事項のうち,国立大学法人の経営に関するもの

B 学則(国立大学法人の経営に関する部分に限る,会計規程,役員に対する報酬及び退職手当の支給の基準,職員の給与及び退職手当の支給の基準その他経営)に係る重要な規則の制定又は改廃に関する事項

C 予算の作成及び執行並びに決算に関する事項

D 組織及び運営の状況について自ら行う点検及び評価に関する事項

E その他国立大学法人の経営に関する重要事項を審議する(第20条第4項) 。

10 経営協議会の議長は学長を充て,議長は経営協議会を主宰する(第20条第5項及び。

第6項)

(教育研究評議会)

11 国立大学の教育研究に関する重要事項を審議する機関として「教育研究評議会」を置く(第21条第1項) 。

12 教育研究評議会は,

@ 学長

A 学長が指名する理事

B 学部研究科大学附置の研究所その他の教育研究上の重要な組織の長のうち教育研究評議会が定める者

C その他教育研究評議会が定めるところにより学長が指名する職員で構成される(第21条第2項) 。

13 教育研究評議会は,

@ 中期目標についての意見に関する事項(9の@の事項を除く) 。

A 中期計画及び年度計画に関する事項(9のAの事項を除く) 。

B 学則(国立大学法人の経営に関する部分を除く)その他の教育研究に係る重要な規則の制定又は改廃に関する事項

C 教員人事に関する事項

D 教育課程の編成に関する方針に係る事項

E 学生の円滑な修学等を支援するために必要な助言,指導その他の援助に関する事項

F 学生の入学,卒業又は課程の修了その他学生の在籍に関する方針及び学位の授与に関する方針に係る事項

G 教育及び研究の状況について自ら行う点検及び評価に関する事項

H その他国立大学の教育研究に関する重要事項を審議する(第21条第3項) 。

14 教育研究評議会の議長は学長を充て,議長は教育研究評議会を主宰する(第20条第。4項及び第5項)

(学長の任命)

15 学長の任命は,国立大学法人の申出に基づいて,文部科学大臣が行う(第12条第1項)

16 15の国立大学法人の申出は,

@ 経営協議会の学外委員で経営協議会から選出された者

A 教育研究評議会の代表者が各同数で構成される「学長選考会議」の選考に基づき行う

@及びAのほか,学長選考会議の定めるところにより,学長又は理事を加えることができる(ただし学長選考会議の委員総数の3分の1以下)。(第12条第2項及び第3項。)

(理事及び監事)

17 監事は文部科学大臣が,理事は学長が任命する(第12条第8項及び第13条第1項) 。

その際,現に当該国立大学法人の役員又は職員ではない者(学外者)が含まれるようにしなければならない(=学外役員(第14条) )。

(役員の任期)

18 学長の任期は,2年以上6年を超えない範囲内で,学長選考会議の議に基づき,国立大学法人が定める(第15条第1項) 。

理事の任期は,6年を超えない範囲内で,学長が定める(ただし,学長の任期を超えてはならない(第15条第2項) )。

監事の任期は,2年とする(第15条第3項) 。

(役員の解任)

19 文部科学大臣は,心身の故障,職務上の義務違反,業績悪化等の場合には,学長選考会議の申出に基づき,学長を解任することができる。

学長は,心身の故障,職務上の義務違反,業績悪化等の場合には,理事を解任することができる(第17条) 。

(国立大学法人の業務)

20 国立大学法人の業務に関する規定を置く(第22条) 。

21 附属学校は,省令で規定する(第23条) 。

V 中期目標等

22 文部科学大臣は,6年を期間とする中期目標を定め,国立大学法人に示す(第30条。第1項)

中期目標は,

@ 教育研究の質の向上に関する事項

A 業務運営の改善及び効率化に関する事項

B 財務内容の改善に関する事項

C 教育及び研究並びに組織及び運営の状況について自ら行う点検及び評価並びに当該状況に係る情報の提供に関する事項

D その他業務運営に関する重要事項

を定める(第30条第2項) 。

文部科学大臣は,中期目標を定めるに当っては,あらかじめ,国立大学法人の意見を聴き当該意見に配慮しなければならない(第30条第3項) 。

23 国立大学法人は,中期目標に基づき,中期計画を作成し,文部科学大臣の認可を受けなければならない(第31条) 。

24 国立大学法人・大学共同利用機関法人の業績に関する評価を行うため「国立大学法人評価委員会」を置く(ただし,評価の際「独立行政法人大学評価・学位授与機構(仮称)が行う教育研究評価の結果を尊重しなければならない(第9条及び第35条(独立)。行政法人通則法第34条第2項の読替) )

W 財務及び会計

25 中期計画終了時の積立金は文部科学大臣の承認を受けて次期に繰越せる(第3226)長期借入金を可能にする(附属病院等の施設整備の財源とするため(第33条) )。

27 各国立大学法人の土地処分収入の一部を独立行政法人国立大学財務・経営センター(仮称)に納付する国立大学法人等全体の施設整備の財源とするため(附則第9条)。

X その他

28 国立大学法人評価委員会は,平成15年10月1日に設置する(附則第1条) 。国立大学法人は,平成16年4月1日に設置する(附則第3条) 。

29 国立大学法人移行の際の学長は現在の任期まで引き続き学長となる(附則第2条30)。 現在の国立大学の職員は国立大学法人が引き継ぐとともに権利義務も継承する(附則第4条〜附則第11条)

31 附属病院の整備に係る国立学校特別会計の既往の長期借入金は,独立行政法人国立大学財務・経営センター(仮称)が引き継ぐとともに,関係する国立大学法人が分担して負担する(附則第12条) 。

32 法人運営の自主性への配慮国による財源措置その他独立行政法人通則法の必要な規定を準用する(第35条) 。

33 「大学共同利用機関法人」についても「国立大学法人」に準じた規定を置く。

(注)○ 学校教育法第2条を次のように修正(下線部を追加。)

学校は国(国立大学法人を含む。)、地方公共団体及び学校法人のみがこれを設置することができる。

〇学校教育法上,法人化後も「国立大学。」

 

 

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資料3-2
中央教育審議会
大学分科会(33)H16.3.16

 

高等教育の将来構想(グランドデザイン)に関する論点整理(案)

1.知識基盤社会と高等教育

 

(1)

知識基盤社会化と高等教育への期待

転換点に立つ高等教育

 高等教育、特にその中核を担う大学は、戦後の著しい量的拡大を経て新たな転換点に立っているのではないか。

 大学とは本来社会的な存在としてその負託に応え、学生に対する教育と学術研究をともに推進し、社会の発展に貢献するものであると考えられる。しかしながら、戦後の日本の大学は社会との連携が十分ではなく、一方、社会の側も大学に対する関心が薄かったと言える。学生は十分な学習を行わないまま漫然と卒業し、それを受け入れる社会の側も大学における教育にはそれほど期待をしない、大学教員も教育よりは研究に力を注ぐ傾向がある、といったことがしばしば指摘されてきた。大学と社会が互いに関心を持たないといった状況が続いてきたのではないか。

 しかしながら、後述する知識基盤社会の進展などに伴い、大学における教育研究に対する社会の関心と期待は非常に高まっている。また、社会的存在である大学はアカウンタビリティを果たす必要がある。大学は本来の姿を取り戻し、社会との連携を深め、自らの理念や目標を明確にして、教育研究の抜本的な充実に取り組むことが求められている。また、社会の側も、そうした大学を支援していくことが必要である。

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高等教育の使命と知識基盤社会化

 高等教育は、教育研究を通じて次のような使命を担っている。

 人格の完成を目指し、豊かな教養を養うとともに基礎的知識及び専門的知識を教育すること。

 創造性にあふれ、我が国と世界の科学や文化の発展の原動力となる最先端の卓越した人材を養成・確保すること。

 人類の知的資産の継承と未来を拓く新しい知を創造すること

 これらを通じ、社会の発展や文化創造に積極的に貢献すること。

 こうした個人の人間形成や、我が国及び世界の発展を支える多様な人材の養成、新たな知の創造と継承、これらを通じた社会貢献の中核を担うのは大学であるが、その他の高等教育機関もそれぞれの特性に応じて重要な使命を担っている。

 一方、高等教育を取り巻く現在の社会状況としては、あらゆる活動が知識や情報を直接的な基盤とするという、いわゆる知識基盤社会化が進んでおり、産業構造をはじめ社会構造が大きく変化。知識基盤社会においては、ボーダーレス化、グローバル化が一層進展しており、国際的な競争力の強化が重要

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高等教育への期待

 

 知識基盤社会化や少子高齢化(平成622050)年には生産年齢人口(1564歳)1.5人で老齢人口(65歳以上)1人を支えるという状況が予想されている。)、グローバル化の進展により、国際競争力の強化の観点からも、知の創造・継承と、幅広い教養を身に付け知的生産活動を通じて社会を支える「21世紀型市民」の育成を担う高等教育は一層重要になる。

 このため、大学をはじめとする高等教育機関においては、生涯発達の観点に立ち、教育力、人間形成力、知的生産力、文明の継承能力等を発揮し、社会との連携を強め、それぞれの特色や個性を生かして社会に貢献していくことが期待される。そのためには、従来の方式を単に踏襲するのではなく、社会状況の変化に応じた教育力や知的生産力を発揮することが不可欠。

 

(2)

高等教育が抱える課題

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高等教育改革の進展と課題

 

 昭和62年の大学審議会の発足以来、高等教育の高度化、個性化、活性化に向けた様々な改革が進展。

 他方で、(1)2で述べた期待に対しては、

 社会との連携がなお不十分で、社会の変化に対応できていないのではないか

 大衆化と多様化が進む一方で質的低下を招いているのではないか

 生涯学習需要への対応が不十分ではないか。

等についての指摘もあるところ。

 

ア)

多様な社会的要請への貢献

 

 高等教育の受益者は学生個人のみならず社会全体である、という視点を踏まえ、知識基盤社会の多様な要請に対応していくためには、高等教育と社会との連携を一層強化する必要がある。

 具体的には、

 社会の人材需要への対応

 教育内容への社会的なニーズの反映

 研究面での社会との連携や貢献

等の面での改革が求められる。

イ)

明確な理念と質的水準

 

 設置認可(事前規制)が緩和される一方で、情報公開や評価のシステムはこれから整備が進められるところであり、

 進学率の上昇や大学院の量的拡大に伴い、質的低下を招いているのではないか。

 大学等の本来の理念や発展の方向性があいまいになっているのではないか。

等の指摘がある。

 また、社会の側も、卒業者の採用時の評価に応じた適切な処遇がなされていないなど、高等教育改革に対する支援や協力が十分であるとは言い難い面もあるのではないか。

ウ)

生涯学習機会の確保

 

 教育費の家計負担が重く、特に大学院生に対する支援が不十分ではないか

 大学院や短期高等教育機関では学生の年齢層が多様化しているが、学部ではあまり進んでいないのではないか。

 多様な年齢層の学習需要に対応した教育内容・方法を提供することが求められる

 こうしたことを通じて、社会人が高等教育機関で再教育を受け再び社会で活躍する、社会の側も高等教育を支援するといった高等教育と社会の双方向の連携が必要。

 

(3)

高等教育の将来構想(グランドデザイン)の必要性

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高等教育の将来構想の必要性

 

 知識基盤社会に対応するためには、高等教育機関が各々の特性に応じ多様なニーズに応えていくことが必要であり、そのためには、高等教育システム全体における各教育機関の役割と機能を改めて捉え直すことが必要。[ここがまだ不明]
 それにより、各高等教育機関の特色を生かした個性的な発展も可能となる。

 また、そのような高等教育機関各々が発揮すべき機能を適切に果たしていくためには、事前規制から事後チェックへの流れを踏まえつつ、教育研究の質的保証・向上を図ることが不可欠

 さらに、18歳人口の減少成人の再教育等の需要を踏まえ、一人一人が学びたいときに学能力の向上を図れるよう、生涯学習需要に対応できる適切な高等教育機会の確保を図ることが必要[いつも知識、労働能力を更新する人間像]

 このような視点を踏まえ、社会と連携する多様な発展を基軸とした新たな高等教育の将来構想を提示することが必要。

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財政措置とアカウンタビリティー

 

 高等教育の将来構想を検討するに当たっては、高等教育に対する財政措置の在り方も検討することが必要。

 その際、我が国の財政状況を踏まえつつ、知識基盤社会の持続的発展を支えるための投資とアカウンタビリティーという観点、大学等の特性に十分配慮した競争的環境と社会的要請を踏まえた重点的支援の観点が必要

 

2.高等教育の将来構想

 

 知識基盤社会化に対応するため、高等教育機関は社会との連携を強化し、それぞれの特性を明確にして多様な要請に応えていく必要がある。

 その際、高等教育の質的保証・向上を図るとともに、高等教育機会の確保が重要

 こうした高等教育の充実により、国民一人一人の能力の向上が図られ、我が国や国際社会の発展に資する

 

(1)

様々な需要に対応した高等教育の多様化

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高等教育機関の位置付けや役割の明確化

 

 中等後教育の各種教育機関はそれぞれの使命と特色を有するもの

 多様化が進み、大学とは何かといった本質や、高等教育機関間の違いが不明確になってきており、それぞれの位置付けや役割を明確化することが必要。[多様化が進めば違いが明確化するはずだが?]
  (各高等教育機関の位置付けや役割等に関する論点については次ページ参照)

 その際、設置形態論(設置主体論)についても併せて検討することが必要。

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多様なタイプの大学の発展

 

 高等教育の中核を担う大学についても、それぞれの理念・目標大学院の有無等の違いに応じて、総合的な教養教育の提供を重視する大学、専門的な職業能力の育成に力点を置く大学、地域社会への生涯学習機会の提供に力を注ぐ大学、最先端の研究を志向する大学など、多様なタイプの大学が必要

 一方、例えば教養教育の適切な実施といった、大学として最低限求められる共通の要素についての考え方を整理する必要があるのではないか
  また、各大学の機能に即した分類の可能性を検討することが必要ではないか。

 教育研究の活性化を図り社会や産業界との連携や国際交流を推進するため、女性や外国人の教員への採用や、企業等を含めた教員の交流、教員の流動性の確保といった教員の多様性や専門性の向上、また、それに応じた処遇の改善が必要ではないか。
  さらに、職員についても多様な専門性を有する人材の配置が必要ではないか。

 多様なタイプの大学の発展に当たっては、国立大学法人制度、公立大学法人制度の発足や、学校法人の管理運営機能の強化のための学校法人制度の見直しの動向を踏まえ、各大学が自律的・主体的に自らの責任において運営を行うという考え方を徹底させること、運営の透明性を高めることといった視点が重要。[2012年現在、これはできているか?まだ政府・文科省に振り回されている部分が大きくないか?]

 

各高等教育機関の位置付けや役割等に関する論点】

1)

大学院

 大学院における研究者養成の在り方
 大学院における研究者養成機能を強化するための方策を検討することが必要。(なお、科学技術系人材の養成については、科学技術・学術審議会人材委員会において2次にわたる提言が出されていることにも留意。)[→東アジア研究科への期待の一つ?]

 大学院や専門職大学院における専門職業人養成の在り方
 研究者養成と高度専門職業人養成の両方を担う修士課程・博士課程と、高度専門職業人養成に特化した専門職学位課程との関係や、専門職大学院の今後の展開(医療等の分野の拡大等)について検討することが必要

 論文博士など学位制度の在り方

 海外の大学との連携(共同研究等)の推進や、外国人教員や学生を多数受け入れた先端的な拠点としての整備

2)

学部

 次の点についての検討が必要。

 高等学校教育の多様化や教育内容の増加、大学院進学者の拡大等を踏まえた学部教育の位置付けや修業年限の在り方・学部における基盤的な教育内容(単なるスキルではなく、課題探求能力、文章を読み表現する能力、ものの見方や考え方等の分析能力の向上。21世紀に必要な教養教育の充実や人格形成など)

 授業方法の改善や厳格な成績評価など学生の主体的な学習の促進策 [→議論する力(聞く、考える、話す)、考える力(書く)]

 各学部の特色として、教養教育、専門教育、専門基礎教育、専門職業教育のそれぞれの位置付けや在り方

 専門職大学院における教育との関係。特に法科大学院との関係での法学部教育の在り方

 外国語能力の育成など国際化への対応

 教育研究の活性化のための教員組織の在り方など

3)

短期大学

 社会や時代の変化に対応した短期大学の位置付けやコミュニティ教育、教養教育、専門職業教育の在り方はどうあるべきか、地方自治体等との関係はどうあるべきか、準学士の位置付け等について検討することが必要。

4)

高等専門学校

 専攻科への進学や大学への編入学の普及を踏まえた高等専門学校の位置付け、5年一貫の実践的技術者養成という設置目的を踏まえた高等専門学校の今後の在り方、準学士の位置付け等について検討することが必要。

5)

専門学校

 いわゆるダブルスクールや大学卒業者の入学の増加等も踏まえ、職業教育機関としての役割も担う専門学校の今後の方向性はどうあるべきかを検討することが必要。

6)

その他の教育サービス

 高等教育と教育サービス産業等のそれぞれの特性を踏まえた役割分担を検討する必要があるのではないか。

 

(2)

高等教育の質的保証・向上

高等教育の質的保証・向上の必要性

 

 高等教育の質の確保については、各高等教育機関において主体的に理念や目標を設定し、自己点検・評価等により自ら検証していくことによって、質的保証・向上を図っていくことが基本となる。

 知識基盤社会を支える高等教育機関としてそれぞれの使命を果たしていくためには、事前規制から事後チェックへという流れも踏まえつつ、行政による質的保証や、多元的な評価システムによる各高等教育機関の自律性を基本とした質的保証・向上が不可欠。

 

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各高等教育機関における取組

 

 各高等教育機関においては、自律的・主体的にそれぞれの理念や目標を明確にし、それに基づいて教育研究を実施するとともに、入学者選抜や教育内容・教授方法の改善(FD、学生による授業評価等)、厳格な成績評価(GPA等)の実施、高等教育機関のマネジメント改革、施設設備の改善等により質的保証
・向上を図っていくことが必要。

 また、これらの取組について自己点検・評価を実施し、その結果に基づいて改善を図っていくことが重要。

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高等教育制度とその運用

 

 設置認可の意義と限界

 教育研究水準や学位等の国際通用性の確保、学生の保護等の観点から、高等教育に関する法令の整備や、これに基づく設置認可等による最小限の質的保証が必要。

 これらの制度や設置認可は、認可後実際に行われる教育等の質について直接保証するものではないという限界を有する。

 制度の弾力化や設置認可の緩和により質の保証にどのような影響が現れているのかを検討することが必要

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多元的な評価システム

 

 教育の質的保証に関する大学の主体的な取組
  認証評価をはじめ第三者評価に関する大学の主体的な取組は、社会からの評価を可能とする意義もある。
  このようなシステムが自主的に責任を持って運営され、社会的な信頼を確立することが、国による規制を最小限にするための不可欠の条件である。

 認証評価制度の定着
  認証評価制度の定着のためには、評価機関の主体性を前提としつつ、評価活動の質的向上に向けた取組等に対する支援が必要。

 情報公開
  大学設置基準等で情報の積極的な提供が義務化されていることを踏まえ、国民に対して積極的に情報提供を行うことが必要。

 国際的な高等教育の質の保証のための方策
  高等教育の国際的な展開やe-Learningによる高等教育の提供が進む中、高等教育の国際的な質の保証を図るための枠組みに関する検討が必要。

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社会と連携した取組

 

 高等教育機関の質的保証・向上のためには社会からの適切な評価が必要。

 例えば、卒業生の質の向上のためには、企業等において採用時の評価に応じた適切な処遇を行うこと等により、間接的に卒業生の質の向上に資するといった方策を働きかけることが必要。

 

(3)

高等教育機会の確保

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高等教育の全体規模に関する考え方

 

 高等教育機関への進学状況については、大学・短期大学を合わせた全体規模はほぼ大学審議会が示した試算どおりとなっているが、学部進学者がのび、短期大学進学者が減少している。

 また、大学院と専門学校の学生数が拡大している。

 これからの高等教育の規模を考える際には、多様な年齢層の学生や留学生、いわゆるe-Learningなど遠隔教育を視野に入れた検討が必要。

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人材需給と地域配置に関する考え方

 

 人材需要と高等教育における対応(人材需給のミスマッチへの対応)

 検討に当たって考慮すべき事項の例

 今後の社会構造と人材需要の変化

 人材育成に要する時間

 人材の流動性

 生涯学習の観点等

 地域配置に関する考え方

 検討に当たって考慮すべき事項の例

 地域における教育機会の確保

 大学の地域貢献機能

 人材の流動性

 遠隔教育の可能性等

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生涯にわたる学習機会の確保

 

 幅広い年齢層に高等教育の機会を提供
  知識基盤社会における成人の再教育など生涯学習需要に対応するため、幅広い年齢層が高等教育を受けやすくなるようシステムの柔軟化が進められてきており、各高等教育機関においては一層の柔軟な取組が必要。

 学生の多様性への対応や新たな留学生政策の構築
 18歳人口の減少や成人の再教育など生涯学習需要の増大、グローバル化等により、従来以上に年齢、能力・適性、履修歴、国籍等が様々な多様な学生への対応が必要。
  また、海外からの留学生の受け入れや、日本から海外への留学の推進など学生の相互交流について、量的拡大に加えて質の向上にも配慮した留学生政策の策定が必要。[質の増加には量の増加が必要(例、教員数など)→財政増必要]

 留学生部会で検討中。

 遠隔教育の拡大とその課題について検討することが必要

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高等教育機会と家計負担

 

 教育費の家計負担の状況や、教育機会の確保に与えている影響の検証が必要[2012年時点でもほとんど進んでいない!貸付増のみ。]

 

3.高等教育に対する財政措置

 

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高等教育に対する財政措置の基本的考え方

 

 受益者としての個人と社会

 高等教育の直接の受益者は高等教育を受ける個人である。しかし、知識基盤社会においては、社会は従来以上に、より高度の教育を受けた人材を必要としている。

 一方、大学等における知の創造は、文化や経済の発展の原動力である。

 また、安心・安全で生き甲斐のある社会の形成など、金銭に換算できない利益も生ずることとなる。

 このように、高等教育の果たす社会的貢献の重要性がますます高まるものと考えられる。

 高等教育に対する財政投資

 高等教育機関は、高等教育に求められるこのような社会的貢献に向けて不断の改革努力が必要。

 高等教育に対する財政投資は、高等教育機関の改革努力を前提として、将来の我が国の発展のための投資として積極的にとらえることが必要特に、基盤的な教育研究経費に対する支援は今後とも重要。我が国の場合、高等教育に対する私費負担の割合がヨーロッパ諸国に比べて高いという特徴があるが、高等教育の私的便益を理由として私費負担に頼ることには限界

 また、教育研究を推進する上で、老朽化・狭隘化対策など施設・設備の整備も重要な課題

 競争的環境における重点的支援とアカウンタビリティー

 我が国の財政事情は少なくとも中期的にはきわめて厳しい見通し

 高等教育に対する財政支援に当たっても、大学等の特性に十分配慮した競争的な環境の醸成と社会的要請を踏まえた重点的な支援の考え方や、アカウンタビリティーを果たすことが重要。

 また、外部資金の導入による収入増加など、各高等教育機関の運営上の努力に対しインセンティブを与える仕組みが必要。

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財政措置の状況

 

 近年、国立大学に対する予算措置や私学助成のような高等教育機関に対する財政措置に比べ、奨学金や研究費補助金など学生や教員に対する措置の方が伸びている。例えば、第2期科学技術基本計画(平成133月閣議決定)において平成17年度までに競争的資金を倍増させるとされるなど、近年、研究費の充実と競争的な配分方式の導入が顕著である。

 また、機関に対する措置については、評価に基づく重点配分や、私学助成における特別補助など、競争的・重点的配分が大幅に取り入れられるようになっている。

 さらに、国立大学の法人化にもみられるように、財政支援に伴うアカウンタビリティーの明確化が求められている。

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競争的環境の整備

 

 設置形態を通じた競争的環境の整備

 法人化後の国立大学は、自律性が拡大し、評価に基づく競争原理が大幅に導入されるが、法令に基づく一定の枠組みの下で、運営費交付金を措置。一方、私立大学に対しては、建学の精神と私学の自主性を尊重しつつ、必要最低限の規制の下で一定の経常費補助。

 このような違いを踏まえ、国公私立大学それぞれの特色を生かしつつ、運営費交付金や私学助成といった基盤的な部分の充実を図るとともに、国公私立を通じた実質的な競争的環境を整える必要。[国公私の区別をつけようとするが、実質は同じなので苦しい議論]

 

 


 

資料3-3
中央教育審議会
大学分科会(33)H16.3.16


高等教育の将来構想(グランドデザイン)に関するこれまでの主な意見




項目

課題についての指摘

課題に対する意見

全体について
 

・グランドデザインは、様々な改革の末にどのような高等教育像が現れてくるのかがわかるようなものとすべき。

・グランドデザインの第一の理念は「社会的な要請への対応」である。社会の変化の動向を見通し、それに応じた高等教育機関の有り様を第一に考えるべき。
・大学が社会の要請にどう応えるかという受け身ではなく、大学が社会をリードしていくという積極性を打ち出すべき。
・グランドデザインの示し方としては、競争原理を導入する、国際的なレベルまで日本の大学を変えていくといった抽象的なものや、専門職大学院をどうするかといった具体的なものが考えられる。

・高等教育は日本の将来のために非常に重要であるという明確なメッセージを発信すべき。
 

・世界の中で見たときの日本の高等教育についての危機感を明確に出すべき。
日本の場合、教育だけではなく研究面でも不十分である。
・日本の未来に向けて、高等教育は高齢化、環境、福祉、グローバル化といった課題に対応する人材を輩出するというようにすべき。
・30年くらい先の国のビジョンを踏まえて、それに必要な人材を育成するという視点が重要。
・大学は新しい時代にふさわしい教育力を持つべきというメッセージを明確に出すべき。

・グランドデザインとしては、制度改正など文部科学省が行うべき内容と、大学の自己改革を促進するという内容の両方が必要。

・各大学が長期的展望を持って、自主的・自律的に改革の工夫や努力を進める必要があるというアピールをすべき。

1.

知識基盤社会と高等教育

高等教育の使命


 
 
 

・大学と他の教育機関との違いを明確にすべき。
大学の使命としては、人格の形成、文明の継承、知的生産活動の3つがあると思うが人格形成についてはほとんど議論されておらず検討すべき

・教育の目的は、倫理性が高い品位ある市民社会の形成であり、大きな意味での生涯学習社会のための大学システムの形成が課題。
・現在の高等教育には、教育力、人間形成力、知的生産力、文明を継承する力の面で課題がある。
・大学の存在意義は、社会についての多角的、批判的見方、考え方を育成する、分析力や総合力を身に付けるというところにある。

  

求められる人材

・高等教育においては、科学技術等も含めた「知」とともに、人を理解するといった私的、情的な面を国際社会でも自信を持ってやっていけるような人材養成を目指すべき。
・グランドデザインには生涯発達の考え方(学び手が自身に内在している能力を発見し、職を得て、それにより喜びを見付けるといった生涯発達の人間像)を入れるべき。
・知識社会において、技術革新により日本の経済を支える人材を育成すべき。

学問と哲学、倫理は表裏一体であり、高等教育においては倫理をベースに置き、卒業生は世界に通用するようにするといった戦略を持つ必要がある。

最大の問題は、創造性がなくなっていることである。あまりにも専門分野に特化しすぎて、企業に入っても転換ができないということではないか

・グローバルな社会において戦える人材を養成する必要がある。知識をリフレッシュする上で生涯学習も重要
・高度専門職業人を支える人材の育成も重要。
・社会の変化に応じて、新しいものに対応できるような人材を養成すべき。
非常に早く専門分化してしまい、特定の分野しか勉強しないという現状では、学問の変化に対応できないのではないか

2.

高等教育の将来構想

 

(1)

様々な需要に対応した高等教育の多様化

・社会の要請や学生のニーズを踏まえると、学術だけではなく、文化やスポーツ、福祉等も重要であり、高等教育は幅広く多様性に富んでいる方がよい。
「世界最高水準」という目標を掲げるのはやめるべき。全ての大学が「世界最高水準」を目指すということは現実的でない。多様な大学を育成することこそ今後の第一の目標である

先行きが不透明な時代にあっては、何が起きてもどこかに対応できる優れた人材がいるということが重要であり、多様な人材を育成すべき
・全ての大学が同じ所を目指すことはできないので、大学の体系を20くらい示し、大学自身に選択させ、その戦略に沿った大学を目指すべき。
・18歳人口の約7割が高等教育を受けている現状において、その教育内容をどう考えるのか。また、残る3割の人達への教育機会の保障をどうするのか検討する必要がある

  

大学の類型化

・国公私を通じて大学が大衆化すれば、その中で役割分担的なものができてくる。社会的役割のメリハリをどう付けていくのか、どういう大学がどのように社会のニーズに対応していくのかを検討する必要がある。

・リサーチユニバーシティとエデュケーション中心のユニバーシティをどう仕分けしていくのかが重要。
高度の学問研究を推進する大学、職業的専門性を育成する大学、教養教育を行う大学の3つに分類して議論すべき。

  

高等教育と社会の双方向性

・大学は18歳の人間が入学するということを前提とするのではなく、幅広い年齢層の者が必要であればいつでも教育を受けられるようにすべき。

・一度社会に出た人が高等教育機関で学び、再び社会に戻っていくという双方向性を明確に掲げるべき
・一度社会に出た人が科目等履修生等でなく、正規の学生として高等教育機関で学べるようにすべき。
・コミュニティカレッジのように、生涯学習の受け皿としての高等教育機関の制度を考えるべき。
3ヶ月コース」「6ヶ月コース」「1年コース」「2年コース」といった柔軟なプログラムを、大学、短大、専門学校が協力して作るようにすべき。
・企業が必要に応じて、社員を大学院に派遣するようにすべき。

・これまでは、大学側の考えで人材を育成してきた。これからは、社会のために大学があるという考え方に基づき、社会のニーズを把握してそれに向けた人材育成が重要。

・社会の要請に応えるということはもちろんだが、社会をリードしていくのでなければ高等教育にはならない
社会からの要請に応じた即戦力になる実務者養成に学部教育が引っ張られている感じを受ける
産業界は大学に専門学校と同じような人材養成を期待している。その要求だけを受け入れていくと、専門学校との違いがわからなくなる[ここは本学の経営協議会ではどうか?]

・高等教育を受けることは個人にとって大きな財産であり、それがひいては国際競争力につながるという視点を打ち出してはどうか。

 

  

国際化・情報化への対応

・実験系を除きほとんどの分野がEラーニングでやれる時代になりつつある。そういうことをきちんと考えていかないと、グローバル化に取り残され、世界戦略に負けてしまう。

・Eラーニングは重要な輸出産業であり、もっと促進すべき。
・アメリカの有名大学は、インターネットを使ってアジアに教育網を広げてきている。

・学部を卒業してもほとんどの者が英語を使えない。文部科学省から「「英語が使える日本人」の育成のための行動計画」が出されたが、国際社会で日本が太刀打ちできるようにするための取組が重要。

日本の場合は英語で授業ができないので、そういうことが可能となるような教育もしなくてはならない。

・英語ができるだけではなく、本当の国際化とは何なのか、それに向けた取組について検討すべき。
・世界の中で日本の大学が競争力を持つようにする必要がある。
 

・理工系の大学院を世界レベルとするため、例えば、日本人と外国人を半々としてはどうかという提言があってもよいのではないか。
・大学教員については必ずしも日本人である必要はなく、外国からの人材も入れた方が良いという時代が来ている。
・欧米系の学生をもっと入学させて大学の国際化を進める必要がある。また、発展途上国の学生にもより良い教育を提供していかなければならない。
・外国人や女性がもっと活躍できるような大学や研究の場とすべき。

  

大学の管理運営

・大学の管理運営について十分な検討が必要。

 

  

大学院

・大学院の在り方や教育機関としての明確な位置付けなど、大学院のグランドデザインが必要。

・大学院の位置付けをきちんとすべき。大学院は大学の一部なのか付属機関なのか、曖昧な形になっている。
大学院の規模は拡大したが、質が伴っていない
大学院の教育については、早くから研究をやらせるために非常に幅が狭い人が多いとの批判がある。時代の変化に柔軟に対応できるような人材を育成すべき

・専門職大学院に対して、研究者養成の大学院をどうするのか検討すべき。

・プロフェッショナルスクールと研究者養成型の大学院で、それぞれどのような人材を養成しようとしているのかを明確にする必要がある
・研究者養成型の大学院では、院生をどのように教育すればよいかあまり考えていないため、卒業生が社会に出て役に立たないという批判がある。
大学院を重点化した大学は、学部の規模を縮小すべきではないか。

  

学位

・人文社会科学分野では、なかなか学位を授与しない傾向にある。
 

・人文社会科学分野では欧米に留学しPhDを取得しないと、国内でも国際的にも通用しない。我が国のPhD課程が空洞化している。

・人文社会科学系の大学院の場合、院生に対する教育が欧米に比べて充分ではなく、学位を取得するプロセスに厳しさが足りない。

・大学教員については、PhDを有していることを要件とすべき。
・大学院における教育を充実させるため、論文博士制度は特例を残して廃止する方向で検討してはどうか。

  

学部

・学部教育とはどうあるべきか。教養教育と専門基礎教育の違いや専門職大学院と学部教育の関係をどう考えるべきか。
・学部では広い意味での教養を身に付けるべきであり、専門知識は大学院で学ぶようにすべき。

 

学部における教育は単なるスキルを教えるのでなく、ものの考え方といった基盤的なことをしっかりやるべき。スキルなど変化するものは専門学校で教育するということにすれば、学部との棲み分けができる。[本学部の会計重視ではどうか?]
・ものを考える力や問題点を分析する力、抽象化して一つの概念とする力が必要だが、特に抽象化する力が弱い。
理工系は専門化しすぎて基本的なものが身に付かないようになっているのではないか
社会科学系は高等普通教育になっており、ベーシックに経済、法学等を身につけさせる必要がある
・あらゆる企業を考慮にいれた専門教育はあり得ないので、具体的な達成目標を与えてそのプロセスの中で人格を陶冶するのが教養教育だと考えている。

・今後も学部の最低修業年限は4年間でよいのか検討すべき。

・分野にもよるが、学部と大学院修士課程を通して一貫教育にするということも考えられる。
・修業年限については、本来4年間でやれるのに学部教育の密度が薄いためできないという面があるのではないか。教養教育にしても密度の濃いものにする必要がある。

  

短期大学

・短大の位置付けをどうすべきか。

・アメリカでは短期の高等教育の機会が、あらゆる人に低い学費で保障されている。日本でも短期大学を最初の学位とし、様々な学習機会を提供できるようにしなければならない
・地方公共団体との連携という視点も重要。
・大学の本質から言えば、普遍化、脱地域ということになるのではないか。短大における地域との関係や貢献のあり方を検討すべき。

  

高等専門学校

・高等専門学校は、もともと中堅技術者の養成からスタートしたが、現在は、専攻科を設けて高度な技術者を養成するという方向になってきている。しかし、本来の現場技術者養成に特化すべきではないか。

 

  

専門学校

・学部における教育と専門学校における教育とはどう違うのか。

・今すぐ必要なスキルについての教育は専門学校で行った方がよい。

  

その他の教育サービス

・企業内教育は色々なところでやっており、必要な知識を身につけさせるという点では、大学ではなく専門の企業や専門学校に任せた方が良いことも多い。

 

(2)

高等教育の質の向上

認証評価制度がしっかり機能するまでの間、どのように高等教育の質を維持するのか。
・事後チェックだけだと学生が犠牲になることも考えられる

・カリキュラムの定期的なチェックシステムを大学に設けたり授業評価を行った後のフィードバックを行うべき

  

卒業生の質

・卒業生の質の保証をきちんとすべき。日本の大学の学生の質が国際的に評価されるのかどうか。

これまでは入学試験が入学時の学力保障の役割を担ってきたが、最近入試は厳しさが低下してきた
・専門分野を超えて「大学卒業」ということについての基準ができれば、共通卒業試験を課すことも考えられるのではないか。
・卒業を難しくすることが必要。また、大学でこういう勉強をしたいというインセンティブを与えることも必要。

  

社会と連携した取組

・卒業生の質を確保するためには、大学だけの努力だけでは不十分であり、企業がきちんと卒業生を評価して採用し、評価を反映した報酬システムを作ることが必要。
 
 
 

・企業において昇進や評価の仕組みが変わらなければ、一生懸命勉強してもしなくても同じということになる。企業に対して意見を出すべき。
・企業も評価に応じた報酬制度に移行しつつある。
・学部卒と大学院卒では初任給が異なる。また個人の能力に応じて、研修期間や昇進の早さに差異を設けている。

大学のカリキュラム企業求める能力に合っていないということであれば、企業側が大学に対して情報発信すべき
 

・企業にとって必要な卒業生の能力については、大学に伝えても十分対応していただけない面がある。
・大学は、インターンシップをお願いした企業、卒業生を採用した企業に率直な批評を聞くことが有益である。

就職活動時期の早期化について改善すべき

就職活動により4年生のゼミに影響が出ている。
企業は、年間採用に変わって行くべきであり、現に変わってきている
・就職活動の時期については、企業と大学双方で意見交換をして、建設的に改善していくべき。

(3)

高等教育機会の確保

全体規模に関する考え方

 

・今後は、高校を卒業したら欧米の大学に進学するケースが増えるだろう。その点も踏まえる必要がある。
・高等教育機関への進学率については、専門学校も含めないと高等教育全体の動きがわからなくなる。

  

人材需給に関する考え方

・我が国が国際競争力を持つためには、優秀な人材を育成することが重要であり、このための高等教育戦略が必要。
・国としてどのような分野でどのような人材をどのくらいの量養成するのか議論すべき。

・これまでは主に国立大学に重点を置いて議論してきたため、社会が必要とする分野の人材数と大学が供給する人材数のミスマッチが起きた。今後は、国公私立大学にまたがる戦略作りを行う必要がある
・今後重要になると考えられる学問分野を、高等教育機関で研究する必要がある。
・人材育成等についてどの分野に重点を置くのかを明確にし、文部科学省の人材育成施策を一体化して運用すべき。
・人材養成にはタイムラグがあり、人材需要のミスマッチはどうしても起きるのではないか。
・社会のニーズは変化していくので、それに対応できるようフレキシブルなシステムを作るしかない
・人材需要のミスマッチを考える際には、学部と大学院を分けて考えるべき。

・学問が進展していく中で、学部や学科の分野構成をどうすべきか。新しい分野に対応することも重要であり、旧来からの分野も必要である学部の分野選択を、全く市場原理に委ねるということでよいのか。イギリスでは、数学や化学といったハードサブジェクトを学ぶ学生が少なくなり、学科を閉鎖するという状況が起きている。[社会の基盤作りに貢献する学問は見落とされがちである。]

・規制緩和が進み、各大学が主体的に学部等の設置を行う中で、社会が必要としている人材を養成するためにはどのようなインセンティブを与えるべきか検討すべき。
・平成3年以降の大綱化により、学部名称等は非常に多様化したが、その中身は社会の需要に対応しているのか。また、競争原理と評価原理だけに委ねると、消滅してしまう重要な学問分野がある
・ハードサブジェクトを専攻した学生が就職できるようにすることが重要。

・日本の場合、工学や理学の分野は、社会人が改めて勉強し直したいと考えても学ぶ場があまりない。どの分野でも勉強できるようなシステムを構築する必要がある。
・医学や歯学、薬学という人命を扱う職業が学部教育だけで良いのか。

・イギリスでは、成人に対する学習機会が非常に多い

  

地域配置に関する考え方

・日本の場合、何もしなければ大学は都心に集中する。首都圏から離れたところにユニバーシティタウンがほとんどない。

・拠点となる大学や学部を中心として、産業立地と平仄を合わせる形で研究拠点や教育拠点が地方に生まれるような仕組みを促進すべき。

・大学が地域文化を育て経済を支えてきたが、社会構造の変化で、大学が取り残されている。

・学問分野の拠点を地方に分散させることで、国立大学と私立大学の連携がおきるような方策を検討すべき。
・地元に卒業者の就職先がないと地方の大学は成り立っていかない。入学者を地域から集め、卒業者も地域に返していくという大学が増えていく必要がある。
日本はジョブが大都市に集まってくる。地方に産業を育て、リサーチパークやベンチャービジネスの振興を図ることが必要

3.

財政の在り方


 

・抽象的に「高等教育に係る財政支出の対GDP比を倍増せよ」といっても、どの部分が不足しているのかを示さないと説得力がない。
・高等教育の受益者は誰なのかを考えるべき。将来の高齢化社会を支えていくのは若者であり、若者に投資しない国は高齢化社会を支えていけない。高等教育の受益者は、社会、国家であるということを明確に打ち出すべき。

高等教育に対する投資が増えないと、日本の国際競争力が心配であるとのメッセージを出すべき
・18歳人口の減少や社会人入学者もそれほど増えない状況にあって、高等教育への財政支出をどう理論付けるか。大学院生への支援など、焦点を明示して社会からの支持を得られるようにすべき。
・博士課程などの高度な研究者の養成にはフェローシップの形で財政支援すべき。
・コストを厳密に調べる必要がある。日本全体がコスト高なので、教育界だけで是正できるものと出来ないものがある。教育界で是正できるものはすぐに改善する、できないものは社会に訴えるといったことが必要。
・機関補助と個人補助の組合せをどのように考えるか。
 
・経常費補助金制度を残しつつ、学生に対する支援もしていかなければならない。
・個人が奨学金で学んで自分で返していくという循環する仕組みを確立する必要がある。
 
 
・奨学金が増えるかわりに私学助成が減るということになってはならない。
・奨学金についてもう少し政策性を持たせる必要があるのではないか。

・高等教育の発展の基礎として、民間がいろいろな形で大学に寄附をするという文化が必要である。

・企業が寄附をしやすいようにインセンティブを持たせる必要がある。
・学校の収入は、1学生納付金2公的資金3民間資金4寄附金5資産運用収入6学校債が考えられる。それぞれについての促進策を考えるべき。

・老朽施設の整備も必要である。

 

設置形態ではなく、よい教育研究を行うところに資金を出していくといったことが重要である。

・各機関の判断に基づき頑張れるような環境を整備するとともに、トータルの財政支出額は固定し、競争的な環境の中で頑張ったところにお金がいくようにすべき。
・私立大学と国立大学の競争条件を、イコールフッティングとしてどの程度同じにできるか考える必要がある。
・イコールフッティングとはどの程度のことを言うのか。私学は設置者が経費を負担するのが前提である。また、国立大学としてやるべきことはやらなくてはならない。そこを明確にしておく必要がある。
・国立大学は法人化しても税金が投与される大学としての使命等がある。イコールフッティングについても、歩み寄りがあるのかどうか議論しなければならない。


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