国立大学長・大学共同利用機関長等会議における文部科学大臣挨拶

 

                                                   平成15210()

 

  1、挨拶前文

 2、挨拶の検討

 

 1、挨拶前文

 

 本日は、ご多忙のところ、ご出席をいただき、御礼を申し上げます。

 本日、皆様方に急遽お集まりいただきましたのは、今国会に提出する予定の

国立大学法人法案の作成作業がいよいよ山場を迎え、我が省として全省的な体

制の下に関係作業に全力を尽くしておりますが、そうした中で、法案の重要と

思われるポイントを皆様方に直接ご説明し、ご理解を深めていただくとともに、

各大学等における今後の法人化の準備作業等に是非とも活かしていただきたい

と考えたからでございます。

 法案の概要につきましては、後ほど担当より詳細をご説明申し上げることと

しておりますので、十分にお聞き取りいただきたく存じます。また、皆様方か

らのご質問やご意見についても、お伺いすることとしております。

 私からは、法案に関連いたしまして、若干の所見をお話しさせていただきた

く存じます。

 まず、法案の作成作業に当たりましては、昨年3月に「調査検討会議」から

いただきました最終報告の趣旨を最大限尊重することを基本としております。

最終報告は、各界の有識者のほか、国立大学、大学共同利用機関の多くの方々

にご参加いただき、それぞれのお立場を超えて、熱心にご検討いただいた成果

であります。法案作成作業に当たって更に工夫を加えたものや立法技術上のルー

ルを踏まえる必要性など、最終報告の内容から若干変動している点もございま

すが、基本的には最終報告で示された新しい国立大学法人の趣旨、内容を忠実

に踏まえることを第一の前提として、作業を進めてきております。

 その上で、法案作成に当たり特に意を用いるべき点といたしましては、次の

ように考えております。

 その第一点は、国立大学と国の関係、責任分担をどう考えるか、という点で

あります。

 法人化により、国立大学は、従来の国の行政組織の一部という位置づけから、

国から独立した法人格を持つ存在となります。これにより、各大学の自主性・

自律性は高まり、運営の裁量は拡大し、学長の責任はより重いものとなること

になります。その意味では、国立大学と国との関係や責任分担は、従来とは自

ずと大きく変わるものと考えております。

 他方、法人化は国立大学の民営化を意味するものでないことは言うまでもあ

りません。むしろ、法人化を契機に、基礎的な学問分野を始めとする国立大学

の使命を従来以上に実現させていくためには、国立大学と国はそれぞれどのよ

うな形でその責務を果たし、どう役割を分担し、連携していくかという視点を

踏まえた制度設計であり、それが最終報告の趣旨、内容と理解しております。

 具体的には、学長の任命や解任の手続き、中期目標や中期計画の策定の手続

き、各大学の業績評価の在り方などの具体的な制度化が重要であり、さらに、

その運用に当たっての国の姿勢が問われるものと考えております。

 第二点は、大学の自律性の確保と社会との間の意思疎通とのバランス、言葉

を換えますと、大学と社会との距離感をどう考えるか、という点でございます。

 国立大学が、財政的に国民に支えられる大学であると同時に、その自律的な

運営について社会から理解を得るためには、社会との不断の意思疎通を図り、

社会的存在としての国立大学の位置づけを明確にしていくことが重要でありま

す。

 従来までの国立大学の在り方については、大学自治、部局自治の名の下に、

社会から閉ざされた、あるいは社会から隔離された存在となりがちな面があっ

たことは、否定できないものと考えます。学問の府としての大学の自主性、自

律性を高めつつも、社会の幅広い知見を大いに大学運営に活かすこと、学生や

地域社会の意見に熱心に耳を傾けること、さらに大学の教育研究の成果や運営

の状況を積極的に社会に情報発信していくこと、のいずれもが、これからの国

立大学にとって、とても大切なことと考えております。

 そのような観点から、学外役員の位置づけ、経営協議会の委員構成や審議事

項、学長選考会議の在り方などについての制度化、その運用に十分留意する必

要があります。

 第三点は、大学内部の意思形成のバランス、すなわち、各学部・研究科等か

らのボトム・アップと、大学全体のトップ・マネジメントとの関係をどう考え

るか、という点であります。

 国立大学に限らず、大学の運営に当たっては、各学問分野の教育研究の責任

を直接担う学部等の意思は十分に尊重されるべきでありますが、これが行き過

ぎて、部局の利害が優先され、ともすれば大学全体としての大胆な改革や速や

かな意思決定の障害になっていることは、誠に残念であります。各学部等の意

見は十分に汲み上げながらも、学長以下の責任ある立場の方々が、大学全体の

戦略的な運営の視点から思い切った変化を生み出していくことが、これからの

大学運営には欠かせぬものと考えております。

 そのような観点から、学長以下の役員会の構成の在り方とその役割の整理、

経営協議会や教育研究評議会の構成とその審議事項など、法人内部の運営組織

の位置づけと相互の関係が、法案作成の上でも大変大事になってくると考えて

おります。

 以上、三点ほど申し上げましたが、最終報告以来、このような視点を十分勘

案しながら検討を重ね、国立大学法人法案の作成に当たってまいりました。

 その際、国立大学協会に置かれております国立大学法人化特別委員会の委員

の方々、とりわけ同委員会の法制化対応グループの諸先生には、専門のお立場

から大変熱心にご指導いただいたと伺っております。この場をお借りして、関

係各位に心から御礼申し上げる次第です。

 今後、我が省といたしましては、法案作成の最終的な詰めの作業を進め、今

月末には、政府として法案を閣議決定し、国会に提出したいと考えております。

また、法案の作成作業と並行して、各大学等における中期目標、中期計画の原

案の作成その他のご準備の作業のためのご相談に応じるべく、省内の体制を整

えたところです。各大学等におかれましては、これらの体制を有効にご活用い

ただきつつ、法人化に向けての諸準備に遺漏なきよう、積極的なお取り組みを

お願いいたします。

 平成164月の法人化まで、残すところ一年余りとなりました。日々の運営

に加え、法人化を控えての皆様方のご労苦はいかばかりかとお察しいたします。

国立大学の法人化は、明治以来の我が国大学制度の大きな転換点であります。

不安な点、不明な点も多々ございますが、それゆえに、互いに競い合いながら

も、これを契機に、大学間の新しい連携、協力の関係を深めていただくことも

大切かと存じます。

 また、法人化は、それ自体が目的というわけではなく、あくまでも、国際的

な競争の中で、国立大学の持つ能力を最大限に発揮し、国民の期待に応える国

立大学として発展していくための手段であり、方法であります。法人化の実を

挙げるためには、各大学におけるこれからの取り組みこそ重要であり、その前

提として、一人一人の教員、職員の方々の意識改革が不可欠であります。どう

か、その点にも思いを致していただき、皆様方を先頭に教職員一丸となって

「新生国立大学」の構築にお取り組みいただきたく存じます。

 私も全力を尽くします。

 皆様方の一層のご理解とご尽力を心からお願い申し上げまして、私の挨拶と

させていただきます。

 

 2、挨拶の検討(塚田)

 

1) 法人化の目的

 

@「国際的競争の中で、・・・国民の期待に応える国立大学として発展していく」こと。

A(→そのためには大学の大胆な速やかな改革が必要である。)

B(→そのためにはその改革が可能な体制が必要である。)

 

疑問:@の内容は何を指しているのか?

 

2) 現状での障害物

 

 ・1、国立大学は「大学自治、部局自治の名の下に社会から閉ざされた」存在である。

  ・2、国立大学では、「学部等の意思」の「尊重」が「行き過ぎて」、「部局の利害が優先され」、「大学全体としての大胆な」、「速やかな」改革を妨げている。

 

 →つまり、

 

 ・1、大学自治の行き過ぎ:国立大学は大学自治のもとで社会から閉ざされた存在となっている。

  ・2、部局自治の行き過ぎ:国立大学では、部局自治のもとで大学全体の改革を妨げている。

 

 もう一つ、発言にはないが解決策として述べられる内容から当然存在することが前提されていると推測される障害物は、

 

 ・3、国からの統制の行き過ぎ:国立大学は国からの統制が強すぎて大学の改革が妨げられている。(あるいはこれから期待されるすばやい改革を妨げる恐れがある。)

 

疑問:1の内容は何を指しているのか?

      2の内容は何を指しているのか

 

3) 解決策としての国立大学法人化

 

 国からの統制の行き過ぎに対して 

 

・国立のままとする。→財政支援を受けられるので、「基礎的な学問分野をはじめとする国立大学の使命を」果たしつづけることができる。

・法人化する。→国からの自立性が高まるので大学の改革が進む。

 

 大学自治の行き過ぎ(=社会への閉鎖性)に対して

 

・学外役員、経営協議会新設:学外者を大学運営に参加させる。→「社会の幅広い知見を・・大学運営に活かすこと」ができる。

(学生、地域社会の意見を聞く)→社会に開かれた存在となる。

・「社会との不断の意思疎通を図」る→財政的支援と「自律的運営」に対し、「社会から理解を得る」ことができる。

 

 部局自治の行き過ぎに対して

 

(「ボトム・アップ」を弱め、トップ・ダウンを強める。)学長以下役員会、経営協議会、教育研究評議会体制を新設→学部等の意見は十分にくみ上げながらも、学長」らの「責任」を強める。→大胆な、速やかな改革が可能になる。

 

 疑問:1)、2)の内容が不明なので、3)がそれを解決するものかどうかも判断できない。