諸氏の意見

 

[78-2] 白川英樹氏の総合科学技術会議2001.11.28での警告
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http://www8.cao.go.jp/cstp/siryo/giji/giji12/giji-si12.htm

「(白川議員)基礎研究の重要性について話をしたい。昨年の私に続き、今年
も野依先生がノーベル化学賞を受賞され、日本の科学技術が世界に認められた
ことは大変うれしいニュースであった。この受賞のきっかけとなった研究は、
私は31歳の時、野依先生は28歳の時で、いずれも大学院を終えて助手になっ
て間もなくのことであり、当時の教官当積算校費、現在の教育研究基盤校費に
よる研究である。これは、プロジェクト研究でも、競争的な資金による研究で
もなく、自由な発想の下に自発的に使えるお金であり、非常に重要であるので、
今後も教育研究基盤校費については、十分に配慮していただきたい。また、同
時に、若い人に「金も出すが、責任も持たす」ことが大切である。」

 

[78-4-1] Jahoo! JAPAN 4235 cpoirewjp 20011217
http://messages.yahoo.co.jp/bbs?.mm=ED&action=m&board=1086166&
tid=9qna9bga4nfhna99tc0afka1bfm2bda1aa&sid=1086166&mid=4235

「・・・すでに、ほとんどの大学は自主的・自律的に学部教育の改革にとりく
み、それなりの成果をあげてきています。国がすべきことは、それら大学の努
力を励ますことのはず。大幅に遅れている国立大学の老朽施設の整備や設備の
拡充などはすぐにでも必要です。10次に及ぶ定員削減によって、学生サービス
も急速に低下しています。教育支援スタッフや事務職員の増員も急務です。

こうした国の支援策は、「教養教育重点大学」であろうがなかろうが、すべて
の大学に対してすべきものです。国が新しいレッテル貼りをして、それを口実
に教育内容に国が介入したり、必要な支援をさぼってよいものではありません。

ついでながら、私は研究における「トップ30」育成にも反対です。ある有力な
医科大学の学長がいっていることですが、たたかう前から勝負はついています。
「トップ30」すでにある格差の公然化、固定化政策です。このことにより、持
つ者はますます富み、持たざる者はますます貧しくなるでしょう。」

 

[78-1-2] 総合規制改革会議「規制改革の推進に関する第1次答申」教育関係抜粋
http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/01/c12-kiseikaikaku.html
・・・・

国立大学の法人化に関する方向性の確定【平成13 年度中に措置】

国立大学を早期に法人化するため、非公務員型の選択や経営責任の明確化、民
間的手法の導入など平成13 年度中に国立大学改革の方向性を定めるべきであ
る。国立大学を法人化することの意義は、これまで多重に規制に守られてきた
国立大学制度に競争原理を導入し、個々の大学に自律的で戦略的なガバナンス
を確立することによって日本の大学において世界的水準の教育・研究が行われ
るような環境を作り出すことにある。

文部科学省に置かれる調査検討会議での検討をまとめた平成13 年9 月の中間
報告では、教職員を公務員とするか非公務員とするか等、幾つかの点について
は明確な結論を出していないところである。例えば、大学や研究機関にとって
の「生命線」は人材であるが、国立大学においては教職員が公務員であること
によって自由な採用、能力や実績に応じた処遇が行われにくい。また、企業と
の兼業をしたりベンチャー企業を立ち上げたりすることなどに対して制度的制
約が存在しているなどの課題が指摘されている。

独立行政法人においては、公務員型・非公務員型とも、給与・勤務条件につい
て人事院のコントロールは受けないことになっており、現状の国立大学に比べ
ると自由度が増すが、公務員型では依然としてその性質から一定の人事管理上
の制約がある。こうした点も踏まえた上で、更に検討を行い、国立大学法人
(仮称)においては、最も重要な人的資源の確保のため、給与、定員、兼職・
転職、休職、採用手続などに関して、当該組織が自律的に決定することができ
る制度設計としていくことが必要である。また、職員の身分のほか、国立大学
法人(仮称)における運営組織や民間的手法の導入の具体的な姿等、法人化に
向けて更に整理を要する課題が存在する。

このため、国立大学を早期に法人化できるよう、平成13 年度中には調査検討
会議においてこれらの課題を整理し、その方向性を定めるべきである。」

 

http://www.nhk.or.jp/debate/th/e/05/onair/e05_3rd.htm

 

テーマ:大学改革

 

1回 12 1日「格付けで大学は世界に勝てるか」

2回 12 8日「国立大学は競争でよくなるか」

3回 1215日「構造改革で大学はどうなる?
               〜遠山文部科学大臣に問う〜」

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ディベートファイル

VTRリポート

 


 

ナビゲーター写真:早川解説委員
早川解説委員

シリーズ「大学改革」最終回の今週は「構造改革で大学はどうなる」をテーマに、大学改革のリーダーシップをとっていらっしゃる遠山敦子文部科学大臣をスタジオにお迎えしてお送りしました。ナビゲーターには引き続き早川信夫解説委員を、ディベーターには鳥取県知事の片山善博さん、名古屋大学学長の松尾稔さん、日本テキサス・インスツルメンツ()社長の生駒俊明さんをお迎えしました。

 

写真:遠山文部科学大臣
遠山文部科学大臣

まず番組冒頭、早川解説委員が「今回の改革は大学関係者の間では受け身と捉える向きもあり、戸惑いや反発の声がある。そんな中で大学改革はうまく進むのか」と問うと、遠山大臣は「今回の構造改革の方針は受け身として捉えるべきではない。1990年代から大学改革は相当な努力をもって進められてきたが、新しい世紀に対応していくためには、さらに加速していく必要がある。それぞれの大学の個性を十分に発揮しながら、明日の日本を担う大学になってもらうよう改革を進めて欲しい。また、われわれも一緒にこの難関を乗り超えていかなければと思っている」と述べます。さらに、早川解説委員が「番組HPにはたくさんのメールが寄せられた。国立大学が法人化したら授業料が高くなるのではと心配している声が多いが、その点はどうか」と問うと、「国立大学は全国各地にあり、比較的安い授業料で、教育の機会均等に寄与してきた。法人化によって家計に負担をかけるようなことはあってはならないこと、むしろ、大学の経営努力により、安くなるよう努力していただきたいと思っている」と大臣は答えます。

 

写真:スタジオ風景
スタジオ風景

早川解説委員が各ディベーターに「大学改革の視点として何が必要か」と問うと、
片山氏「大学が自主性をもつところから改革はスタートすべき」
松尾氏「教育研究に関し、大学を活用する人々、つまりユーザーの視点からの改革が必要」
生駒氏「大衆化に伴う多様化。産学連携のみならず学学連携を含めた連携が大切」

次に、「文部科学省は改革の柱として『再編・統合』『国立大学法人化』『国公私トップ30』を掲げているが、この改革に取り組もうという心は何か」と遠山大臣に問うと、
遠山大臣「新しい世紀を迎え、大学は知の拠点として、益々重要な日本の存立根拠となっている。その大学の改革なくして日本の繁栄はありえない。勢いをさらに増して改革を進める必要がある。特に国立大学は国費を使っているので、国民の期待にこたえていかねばならない。自立性を高め、多様性を持って、それぞれの大学が個性をもって輝きながら、本来の使命である人材の要請および研究を進め、社会に貢献するきっかけとしていただきたい」と述べます。

そこでHPに寄せられた「国立大は減らさないで欲しい」といったメールが紹介されます。

紹介メール(1)(2) 

こういったメールを受けて、改革の3つの柱について、各項目ごとに議論が始まります。

 

写真:片山氏
片山氏

<再編・統合について>
片山氏「3人のうち、私だけ反対ということになっているが、それは遠山大臣の理念はわかるが、根本のところを見失っているからである。つまり自主性を許さないのだ。『クライアントの要望に沿って変えるべきところを変える』ということがない。政府や文部科学省がさまざまな規制で自主性を阻んでいる。大学が自主的になってクライアントを見て、変わるべきで、そのあとの再編統合であれば、ありうる。定数管理、財政の問題から、まず再編統合ありきでは順番が違う」
遠山大臣「自主性を尊重するという趣旨でこれまで改革を進めてきている。大学設置基準を大幅に緩和し、自分たちでカリキュラム作成、流動性を促してきた。しかし、それが実際に実行に移されない」
生駒氏「今回は、文科省が初めてトップダウンで具体的な言葉で指示を出してきた。これまでは枠組みだけ作り、『個性輝く』とか『高度化』といた抽象的な言葉で指示を出してきた。今回、具体的な言葉で初めて方針を打ち出してきたことは評価できる」
松尾氏「条件付の賛成。再編統合はあくまで自主的、自律的であるべきで、新しい価値を生み出さねばならない。敗戦後の貧しい時代、ひとつの県にひとつないし2つ以上の大学を作るというポリシーは間違いではなかった。しかし、現在では地理的に距離があっても、実際には近くなってきているので、合理化できるところは合理化が必要。一県にひとつの大学は必要だと思うが、今の行政、県を細かく区切りすぎている。道州制でも採用し、大きく捉えればよい」

 

写真:討論の様子
討論の様子

遠山大臣「ご指摘のような方向で進めようとしているのが今の改革。再編統合であり、廃止ではない。地方の国立大学は特に住民、企業の方々の知的な部分の支えであり、文化的な拠点でもある。今までの形ではなく、いい形で発展していかなければ、地方の方々もサポートしていかない。単純な地方大学の切捨てといったことでは全くない。ひとつの大学として法人化するにはスケールが小さすぎる場合は統合するといったように、もう少しマクロな形で、自主的に考えて欲しいと、呼びかけている」
片山氏「地方国立大学は大きな役割を果たしている。たとえば、昨年、鳥取県は大きな地震に見舞われたが事前に震源地を特定した訓練をしていた。それは鳥取大学の研究者から事前に『地震がおきるかもしれない』と情報を得ていた。それこそ、地道な研究努力の積み重ねによるたまもの。こういった地域に根付いた研究が軽んじられたり、適当な数合わせになると地方にとって大きな損失となる」
遠山大臣「そういうことはない。様々な形で地域に貢献する地域の力、国力にもなる大学を作っていきたい」

ここで大学進学を目指して勉強中の受験生からの「国立大学は私立に比べて、個性的な魅力に劣る」といったメールが紹介されます。

紹介メール(3) 

 

写真:松尾氏
松尾氏

このメールを受けて
松尾氏「その批判は当たっている。大学の個性化、多様化、弾力化の必要性はこの20年間繰り返し唱えられてきたにもかかわらず、均一化、画一化を進めてきた。これは反省すべき。しかし、国立、私立ともに、人口減少によりさらに受験生獲得の競争激化し、個性化、多様化は当然の流れとなる。しっかり大学を選んでほしい」
遠山大臣「国立大学に魅力はない、ということだが、魅力を持っているが、発信する力が弱い。良さをアピールする努力が必要」
生駒氏「国立大学はミニ東大を目指してきた。変わろうと思っても変われなかった。それが、トップダウンで変革をもとめられているのだから、変わらざるを得なくなった。大学が自分のところの売りをインターネット等で出して、アピールしていく必要がある」
片山氏「地域の特性や、企業・就職先のことを考えて、大学はこうしたいという方針を自ら出していくことが必要。これまでは文部省、財政当局からの縛りの中で、身動きが取れず、学長といえども人事権がまったくないような状況の中で、改革を進めるといっても無理があった」

早川解説委員が「再編統合により改革があるのか、改革を進めた先に結果として再編統合があるのか、といった違いがある」とまとめ、論点は次の項目に移ります。

<法人化について>
松尾氏「法人化という言葉は嫌い。法人格をもった国費で維持される大学ということ。法人格を持つことが大切で、それに対して賛成している。国費で教育研究費がまかなわれなければならないと思っている。その上で、もっと裁量権を持つことが大事。国としての長期的、理念的な目標をどうするのか、がないと、長期目標は描けない。グランドデザインのもと長期目標を描いて、裁量権を持ち、法人格をもった国費で運営できる高等教育であるべき」
遠山大臣「欧米諸国の大学は、ほとんど法人の形態をとっている。それにより、自主性、自立性をもって大学の運営をしている。国立大学法人という設置形態をとることにより、自信をもって、学校管理、人事、給与についても自由にやりつつ、教員間の流動性も高めていくことが出来るようになる」

 

写真:生駒氏
生駒氏

生駒氏「法人化には基本的に賛成。そのことにより、経営責任をはっきりさせ、自主自立が保てる。しかし、企業の経営と一緒に混同しないことが大事。大学の社会的責任とアカデミック・フリーダムをどう調和させるかが大学経営の根幹。中期目標を設定し、大臣が認可するという形をとることにより、今までよりも国のコントロールが強くなるのではないかという懸念もある。予算の配分に関しては文科省が直接やらず、評議会のようなものを設置して、距離を置くことも一つの方法と考える」
松尾氏「構造改革の方針でも、民間的手法と民間的経営は違う。民間的経営を大学に持ち込むとしたら、禍根を残す。行革の必要性は認める。行革の視点が今回の改革の特徴だと思うが、経済的効率ばかりが重んじられるのは困る」
遠山大臣「国の関与が強まるなどとはとんでもない話。ただし、国立大学である以上は、何らかの国の関与があってしかるべき。今よりさらに自主性を高めようという改革であるから、それぞれの大学が進めるカリキュラムの内容や、教育研究に対して、口出ししようということではない。また、経済効率のみが優先されてはならないというご指摘には、まさにこのような厳しき経済状況の中、効率化は考えられるべきであるが、それよりも、本来教育、研究の高度化、多様化を達成するための改革であることを強調したい」
片山氏「遠山大臣のお考えはよくわかるが、官僚組織はコントロールをしたい人たちの集団であり、構造改革はやはり財政効率が一番頭にある。国家公務員の定数管理とか、民営化の話でもっと効率性を高めるという考えが優先されるところ。果たして、民営化になって儲からない研究などが維持できるか、不安を感じる」

 

写真:日本の高等教育の財政支出を国際比較しながら話す遠山大臣と早川解説委員
遠山大臣と
早川解説委員

遠山大臣「日本の高等教育の財政支出は先進国の中でも最低。アメリカ1.07%に対し、日本は0.43%。半分以下だ。大学の数は多いのに、予算は少ない。国立大学の話ばかりが先行しているが、私立大学に対しても、同様にバックアップが必要。大学の活性化が日本の活性化につながる。高等教育に対する財政支出が少ないのは問題であることを再認識すべき」

ディベートファイル 

そこで「トップ30」について寄せられたメールがVTRにまとめて紹介されます。

VTRリポート1 

 


 

<トップ30
これを受けて早川解説委員が「ランクの固定化や資金の配分に対する心配の声が多かったが、この点についてはどうか」と遠山大臣に問います。
遠山大臣「トップ30という言葉が一人歩きしすぎている。今回の改革の狙いの一つが、第三者の評価を重視しながら、それぞれの機能を発揮してほしいということ。30という数字は非常にシンボリックなもの。重要な点についていくつか誤解されている点があるので、解き明かしたい。まず、国公私立を通じ、学問分野別に、大学からの申請を前提としている。評価機関は文部科学省ではなく、第三者委員会のようなものを作り、主として研究面でポテンシャルの高い大学に対して、重点投資していくということであるが、大学への援助の仕方は、他にも科学研究費補助金1500億円以上、それ以外に研究的な基盤を支える経費も支出しており、それらをさらに充実していく。したがって、第三者評価によるトップ30への重点投資だけで、日本の大学を良くしようというのではないことをご理解いただきたい」
生駒氏「トップ30は格付けだと誤解されやすい。しかし、これは研究大学を30選ぶということ。研究を主とする大学と教育を主とする大学を分けたということだと理解している。日米の大学を比較して最も異なるのは、研究環境。日本の大学は研究環境が劣悪であり、211億の予算はそれほど多い金額ではないので、研究費に使うというよりは研究環境を整備するために使うと考えたほうがよいと思う」
片山氏「大学の目指す方向、すなわち自主性、個性化、多様化と、このランキングとは相容れないものがある。トップ30とか言わず、大学の中から様々なものを吸い上げ、それを伸ばす方向ですべき。また、評価というのは非常に難しい行為で、今現在ある、様々な評議会のようなものが真に機能しているかというと疑問である」
遠山大臣「日本で客観的な、民間の良い評価機関がないのは大いに問題。大事なのはうまく運用することにより、既存の学問分野にないような新しい学問分野や、地方の大学でも私立でも公立でも非常に良いものをもっている所に光を当てていけるということだと思う」
片山氏「今のような説明には違和感がないが、実際に官僚が動き出すと、志とは違う方向に行ってしまうことが経験上多々ある。一番欠けているのは情報公開。徹底した情報公開をして、文科省の息のかかった評価機関ではなく、自然の中から評価が生まれることにより、評価機関が育つということもある」
松尾氏「トップダウンで降りてくることには大体驚かないが、トップ30だけは驚いた。先程から話に出ている透明性、わかりやすさが確保されていない。制度設計、つまり、どういう分野にどういう理由で対象にしていくのか、審査基準などがわからない。基本的には競争は不賛成ではないが、30という数字は先ほどもシンボリックという説明があったが、ほとんど意味がない。審査のときに過去の実績からのみ評価するとしたら、将来に対して重要な問題をどう入れていくかが見えてこない」

次に早川解説委員が「大学改革というと、今ある問題をどうするかという議論になりやすい。大学のあるべき将来像について、今度は長期的な展望に立ち、国公立、私立を問わず、大学の持つ機能、研究と教育をどうするかを議論していきたい」と述べ、国立大学の現状について、名古屋大学の例を取材したVTRが紹介されます。

VTRリポート2 

 

写真:
遠山大臣、
早川解説委員、
藤井キャスター

<大学の研究をどう改革するか>
これを受けて、「厳しい大学の研究環境についてどう思うか」と遠山大臣に問うと、
遠山大臣「ほんとうに大問題。こういう大学においておきながら、期待されても大学の教員たちも希望が持てないだろう。環境はとても大事。そこで、この4月に国立大学の施設の緊急整備計画を立て、5年間で16千億円必要なことが判明し、第2次補正予算に多額の予算を要求している。一気には出来ないが、5年間継続することにより、環境整備を整えたいと考えている」
松尾氏「野依さんの部屋。非常に狭い。大学施設の建物が狭いのは日本の構造的な問題。文部科学省だけが悪いのではない」
生駒氏「日本の研究環境は劣悪。かつて『アメリカに来れば、環境も給料も良くなるよ』と自分もよく言われた。優秀な人が大学に残らなくなる。本当に優秀な人が大学に残り、研究、教育に携わるようにしないと日本の将来はない。そのためには研究室を広くし、研究を支援する人々を配し、先生が研究に専念できるようにする。ケンブリッジのように先生方の建物の施設をよくし、ステイタスをつくる。それはいい人材を集める鍵。日本は経済大国にもかかわらずお金がその方面に行かない」
松尾氏「GDPに対する比率が少ないと先ほども大臣はおっしゃったが、欧米並みにして、環境をよくしないと厳しい」
遠山大臣「確かに非常に大事な問題。大学自身がこのような方向に向かってこれだけの努力をしていくという、確固たる意志を見せる必要がある、それにより、内閣の姿勢も国費予算も変わる。今ここで躊躇してはいけない。また、企業も諸外国の大学に対して莫大な金額を寄付してきたと思うが、様々な規制緩和も平行して進める中で、法人化された大学は、民間企業や地方公共団体の理解、寄付をいかに取り付けるか努力をする必要があるだろう」
片山氏「教育にもっと投資してよい。これまで国債の対象になるものだけを一生懸命やってきた。したがって、公共事業優先で、教育が二の次となってきた。地方も単独で箱ものばかり作らずに教育に投資すべき。これからの財政の優先順位を変えていかねばならないと思い、実践しつつある」

 

写真:天野キャスターが遠山大臣への質問メールを紹介し、問いかける様子
質問メールを
紹介する
天野キャスター

そこで、HPに寄せられた、大学の研究テーマについて「基礎研究を重視するのは当然としながらも、実際の施策はそれを困難にする方向に向かうものばかり」といったメールが紹介され、この点をどう考えるかが、遠山大臣に問いかけられます。

紹介メール(4) 

遠山大臣「基礎研究の重要性については身にしみて、信念として持っている。学術関係については若いときに、様々な企画立案に携わり、研究者の豊かな発想を前提にした研究の大切さを十分に認識している。科学研究費補助金の拡充はまさに、研究者が自主的に発想した時に対応するためのものになっている。研究者の自由な発想に基づく研究は権利であると同時に、国立大学の場合は義務でもある」
松尾氏「大学本来の使命は、自由で個性的な創造的な研究。総合的に科学技術関係に国家の政策としてお金をつぎ込むのはいいことだが、重点分野だけを決め、そこだけにお金がいくというのはよくない。大学は興味が先行してこそ、偉大な研究成果が生まれる。半分は国家利益としての重点分野の充実、もう半分は自由な個性的な発想が伸びていくことこそが重要。トップダウンとボトムアップとバランスをとる必要がある」

次に大学のもう1つの役割、教育について、地方の2つの国立大学を取材したVTRが紹介されます。

VTRリポート3 

 

写真:討論の様子
討論の様子

<大学の教育はどうあるべきか>
これを受けて早川解説委員が「今、大学は二極化している。一方は大衆化型大学で大学を卒業した後、困らないような教育を付与する。もう一方はブランド型大学で受験生が殺到する大学で、高い知を授けることが求められている。こういうことを踏まえながら、どういう教育サービスを提供すべきかについて考えたい」と問うと、
片山氏「卒業生の学力低下、教養の低下が問題になっている。縦割りになっている。自分の専門知識には詳しいが、ほかに対する興味関心薄い。全人格的、幅広い教養を目指して欲しい。大学は常に改変的である必要がある。実際、鳥取環境大学を作るときも、細かい指導がある。大臣の部下の方が一生懸命細かい指導をしている。詳細で煩瑣である。それらを見直して欲しい。それが自主性につながる」
遠山大臣「規制緩和して、大学の自主性を取り戻すことが大学改革の狙いであるから、そういう実態があるとしたら、やはり改革を進める必要がある」
生駒氏「研究よりも教育がおろそかになっている。日米で比較すると、『基礎学力』と『考える力』が不足している。明らかに、日本のほうが大学教育がうまくいっていない。大学の大衆化に対して、昔ながらの研究と教育の不可分論が続いている。教育では専門職業教育と教養教育に分けていくべき。しかし基本的には大学は教養教育をもとにして進めて欲しい。オルテガ、フンボルト型大学を並置する形で進めていただきたい」
松尾氏「大学は大学で反省している。全力を挙げて教育に取り組むべきと思っている。生駒氏とは別の意味で、研究と教育を分けるべきと思っている。しかし、教官は研究と教育両方出来ないとだめ。大学は二極化どころかもっと多様化し、研究重点大学から、一般教養、あるいは資格に特化した大学といったように分かれていく。いずれにしても、研究は研究、そのことだけしか講義できないではだめ。教養とはよき市民をつくる教育であり、教養教育員、高等研究員とかを専従でつくる試みをしている。教養は大事。生命科学ひとつ考えても、医学部だけに任せておける問題ではない。全学部にまたがる学問、学際ではなく、融合、文と理の融合が大事」

そこで早川解説委員が「教育のグローバル化が言われており、インターネットによって日本にいながら、海外の大学に学ぶといったケースもでてきており、優秀な学生の海外流出の危険性が言われているが、流出させないためにはどうしたらよいか」と問うと、
生駒氏「流出は大いに結構。企業がグローバル化しているときに対応できる人材がいないので、海外で大いに鍛えてきて欲しい」
片山氏「大学がグローバル化している中、役所・官庁・企業の対応が遅れている。官庁・役所でもグローバル化に対応できる人材を育てることが必要」
松尾氏「大学は国際公共財だと思っている。どんどん出て、どんどん入ってくればよい。ただし、海外からの研究者を住まわせる住居の問題等、四苦八苦しながら対応している。このような問題にも目を向けて欲しい」
遠山大臣「グローバル化時代にどう対応するかは、恐れずに、自らの大学を魅力的にすることによって力を尽くして欲しい」

 

写真:メールを紹介する天野キャスター
 

そこでHPに寄せられた「大臣に期待しています」というメールが紹介されます。

紹介メール(5) 

これを受けて
遠山大臣「大学が自主性を発揮していけるように、様々な手当てをしながら、進めていきたい。ここにきて、やっと大学の研究はこうありたい、教育はこうありたいと、色々な人からの要望がオープンになってきて、関係者が自覚し始めたところだと思う」

 

写真:遠山大臣が番組の最後に発言する様子と、それを隣で見つめる早川解説委員の様子
 

そこで、早川解説委員が「キーワード的にあげるとすれば、大学自身として理念、情報の発信、地方色。育てたい分野、人材が何かを情報発信することにより、地域の理解を得て、結び付きを深めることにより、大学の独自性が出てくるのではないか」と述べ、最後に大臣から一言、そして各ディベーターに大臣に対して一言ずつ発言を求めます。
遠山大臣「大学のあり方は国を左右する。各大学はよりよくするために、全力を投球して、本来あるべき機能を十分に発揮して欲しい。これまでは閉じた社会であった大学が地域に、国に、国民に、学生に開かれることにより、透明性と公益性を拡充していって欲しいし、行政はそれを十分にサポートしていくような良い関係を構築していきたい」
片山氏「個人的にも、次の社会をになう子供たちのために、各大学は人材を輩出する大学として活性化していってほしい。その活性化は上からの押し付けではなく、自主性を尊重したものであって欲しい」
松尾氏「大学も努力する。しかし、構造改革の経済面ばかり叫ばれているのでは困る。大臣にはぜひ、大学の本来の使命を発言していって欲しい」
生駒氏「大学の第一の使命は教育であることを各大学の先生に言っていただき、優秀な人材を輩出する努力をしていただきたい」

最後に早川解説委員が「教育の成果があがるのは10年後、20年後。今、舵をきったことが10年後、20年後に成果が出る。そういう意味で皆さんの責任は重い。ぜひ頑張っていただきたい」と感想を述べ、討論は終了しました。

次回は、年明け112日、「医療制度改革〜1000通のメールから」をテーマにお送りします。