バブルの発生過程の説明

 

 通常の経済活動の中で、ある特定の商品の値上がりが目立つようになります。経験上、それは、土地、株式、美術品などです。これらを投機対象商品と呼びましょう。投機とはそれを使うのではなく、転売して設けることを期待して買って売ることです。少しの間それを持って、値が上がってから売り、その差額を稼ぐわけです。

 日本の1980年代の景気が良い時、お金をもうけた人、会社が使い切れないお金を銀行に預けるより、こうした商品の売買に使い、さらにもうけようとしたわけです。これはいわば山登りのようなもので、あるとき頂上に上り詰めます。それを過ぎると、もう誰もそれを買おうとしないときが来ます。それは景気の頂上が近付いたときで、そのときには、たとえば今土地を高値で買っても、次にそれを買ってくれる人はいないだろう、と誰もが思うようになります。するとそこで投機的商品の売買は終わります。

 ただ、ここまでだと、最後にその土地を買った人は一番高い価格で買ったけど、次にそれを売る相手はいなくなりました、この人は誰も買ってくれない土地を抱え続けました、かわいそうですね、で話は終わるのですが、実はバブルの時は、このように土地を買い続けるたくさんの人は、自分のお金ばかりでなく銀行からお金を借りて買います。だからそれを次に売れないと、借りたお金が返せないことになります。銀行は貸したお金が返ってこなくなるので、それまでどんどん借りてくださいと言って機嫌よく貸してきたのに、とたんに、貸しても返ってこなくなりそうだからもう貸しません、という行動をとります。

 ほとんどの企業は毎年会社を経営するときに、例えば製品を作っている最中でまだ販売代金が入ってこないというような時にも賃金や材料費は払い続けますから、手持ちのお金が不足する時期があります。そのときには銀行からお金を借りてしのぎ、販売代金が入ったら銀行に返す、ということを繰り返して、普通の企業は回っています。

 ところが上のようにバブルのピークが過ぎたとき、銀行は「貸し渋り」(この言葉は1990年代に有名になりました!)行動をとります。そののせいで、それまでだったら普通に経営できていた企業でも、手持ちのお金がない時に銀行から借りることができなくなり、企業が倒産します。こうした倒産があちこちで起こります。全体の景気がどんどん悪くなります。これがバブルの破裂です。

 ですから、目の前にきれいに見える山(それを登るとどんどんもうけることができそうな山)があり、実はそれを登り続けると後で崖から落ちるのに、それに気がつかずにどんどん登ってしまい、崖から落ちてしまうというのがバブルのイメージですね。

 なお、景気が良い時に、銀行が、ここで貸出をやりすぎてバブルを作ると後が怖いぞ、と、貸し出しに慎重になればよいのですが、景気が良いときは銀行はたくさん借りてもらった方が利子を稼げるので、また、そうしないと銀行間の競争に負けると考えて、どんどん貸し出してしまうのです。銀行の気持ちもわかりますが、このような近視眼的な行動がある限り、またバブルが起こるかもしれません。

 実は銀行の貸し出しを調節するということについては、日本銀行という政府の一部ともいえる中央銀行がそれをする力があるのです。これを金融政策といいます。ところが1980年代後半のバブルの時は、この中央銀行が市中の銀行に対して貸し出しを抑えなさい指導しなかったのです。だから日銀のこの行動もバブルを作り出す一因となったと言えます。