有機元素分析装置
パーキンエルマー社;2400CHNS
Elemental Analyzer
Perkin Elmer ; 2400CHNS

1. はじめに

 有機化合物,天然物などの同定及び化学構造の推定や,確認を行う場合,物質を構成している元素の組成を正確に定量することが重要である。有機元素分析装置は,有機化合物の主構成元素であるC,H,Nの含有量を燃焼分解により定量的にH2O,CO2,N2に変換し,これらの各成分を熱伝導度検出器によりC,H,Nの含有量を決定するもので,化学反応による反応生成物の化学量を正確に電気量に変換し分析する装置である。本分析では,分析試料が微量であり,分析結果に大きく影響を及ぼすため,試料のサンプリングは,超微量電子天秤を用いて0.1μgまで精密秤量±0.3%の許容誤差の範囲内で再現性よく定量分析を行うことができる。本装置の燃焼部は,横型に配置されており,試料燃焼後に残留する灰分の重量測定が可能であり,有機化学物以外の物質にも利用されている。

2. 測定原理

 本装置は,燃焼炉,酸化炉,還元炉より成る燃焼部と生成したH2O,CO2,N2 を採取する定量ポンプ部及び,C,H,Nの各成分を測定する検出部より構成されている。
(1) 燃焼部
 秤量した試料をボートに載せ導入棒で燃焼炉に入れ,燃焼分解させる。有機化合物は数百度の温度で,熱分解し低分子気体となり,炭火物として残留するものは,酸素を含むHeのキャリーガスを流すことで気化してしまう。これらの気体を酸化銅,サルフィックスを充填した酸化炉及び還元銅,銀粒を重点した還元炉を通過させ,完全にH2O,CO2に酸化させた後,還元銅で窒素酸化物の還元と過剰の酸素の除去を行い,H2O,CO2,N2としてHeと共に定量ポンプに送り出す。有機化合物の構成元素としてよく用いられる硫黄,ハロゲンは,いずれも燃焼すると強い酸性物質を生じ,H2O,CO2吸収管に到達すると大きな障害となるため,妨害元素除去剤としてサルフィック(銀・酸化コバルト混合粒)を充填している。この試薬は,酸化コバルトの触媒的酸化能により酸化し,銀の化合物として除去することができる。これらの各充填物は,一定時間内に化学反応が完結するよう反応性が高く,反応面積が広く,反応後の気体の通気阻害のないよう考慮して酸化銅,還元銅は線状のものを,その他は粒状のものを使用している。
(2) 定量ポンプ部
 150mlの容量をもつ定量ポンプを一定時間作動させ,燃焼部より送り出された気体を採取し混合する。この定量ポンプはモーターでピストンを右へ移動させると,気体が導入され,左へ移動すると,ポンプ内の混合気は,検出部へ押し出され,次のポンプに試料の気体が採取される。このようにピストンを一定速度で右左と移動させることで,採取と検出部への放出が同時に操作できるため,連続分析が可能となっている。
(3)検出部
 検出部には,キャリヤーガス中のH,C,N成分を検知するセンサーとして,作動熱伝導計3対と,各熱伝導部セルの入り口側と出口側の間にH2O吸収管,CO2吸収管,ディレイコイルを直列に接続している。
 定量ポンプより押し出された気体は,各吸収管で1成分ずつ除去されるため,吸収管の前後で熱伝導差が生じ,不平衡電圧として除去された成分に対応したシグナル(H,C)が得られる。また,吸収管で除去できなかった,N2とキャリヤーガスが熱伝導セルに入り,満たされていたキャリヤーガスとの熱伝導差がN2成分のシグナルとなり,H,C,Nの順でプリントアウトされる。
(3)計算

0.元素分析の原理
1.はじめに
 有機定量分析では,取り扱う有機化合物の試料量によって,分析法が分類され,常量分析(0.1〜1g),少量分析(10〜100mg),微量分析(1〜10mg)及び超微量分析(1mg以下)と呼称される。
 ここでは特に内容を有機微量元素分析に限定し,現在医薬品合成研究の場で汎用されている方法,さらには今後汎用されると思われる方法も若干加えて,それらの原理について概要を記述する。

2.熱伝導度法による炭素,水素,窒素同時分析法

 熱伝導度検出器は,比較的簡単な構造で,高い感度と良好な安定性をもつ検出器である。現在では炭素,水素,窒素の常用分析で汎用されている同時分析装置は,ほとんどこの検出器を使用している。いずれの分析装置もヘリウムをキャリヤーガスに用い,燃焼管内で生成した二酸化炭素,水及び窒素を分離定量系へ送り出す。分離の方式については,以下に記す4つに大別される。いずれの分析法も炭素,水素,窒素分析の許容誤差は,±0.3%以下である。なお,このほかに,二酸化炭素と水の検出には,赤外域における特性吸収バンドを測定する方法を用い,窒素の検出には,熱伝導度法を用いる方式のLeco製CHN型炭素,水素,窒素同時分析装置(赤外検出法)もある。

a.作動法

 この原理による分析装置は,試料2〜3mgを白金ボートなどに秤取り,燃焼管内に入れる。多数のボートを順次燃焼管に送るオートサンプラーも使われる。ヘリウムのキャリヤーガスが常に燃焼管口からあふれている状態で,少量の酸素をヘリウムに混合しながら試料を燃焼する。燃焼ガスを酸化銅,サルフィックス(銀・酸化コバルト),銀,還元銅に順次通し,生成した水,二酸化炭素,窒素を管尾からポンプで採取する。ポンプは一定容積(150ml)となったときに自動停止し,内部のガス混合を行った後,検出部へ押し出す。以下の方法により,分離定量する。3対の作動熱伝導計を直列に連結し,混合ガスを通過させる。第1対の測定セルを通過後,水吸収管[Mg(ClO4)2]に導入し,水を除去した後,参照セルに通じる。次に第2対の測定セルを通過後は,二酸化炭素吸収管[NaOH/Mg(ClO4)2]に導入し,二酸化炭素を除去した後,参照セルに通じる。最後に残った窒素とヘリウムを第3対の測定セルを通過させる。このとき参照セルには,あらかじめ蓄えた遅延コイル中(ポンプと等容積)の純ヘリウムを流しておく。これにより,測定セルの熱伝導度変化を計測する。各熱伝導度対の不平衡信号を自動スイッチで水,二酸化炭素,窒素の純に一定時間だけ取り出して検出する。この後流路を自動的に切り替えて,純ヘリウムで装置内を完全に掃引し,次の分析を行う。信号は検出法などにより重量換算し,試料の炭素,水素,及び窒素含有率%を求める。1回の分析に15分程度要する。