山口県のプロジェクトとして2016年から電気自動車(EV)用に使用された中古リチウムイオン電池のリユース・リサイクルに関する研究を実施しています。
研究成果を"Photovoltaic systems with secondhand batteries of electric vehicles
and their social implementation in times of COVID-19"としてまとめ,ICMEM2021で発表したところ,Best Paper Awardを受賞しました。
内容の概略は以下の通りです:
コロナ禍によってテレワーク,ステイホームが進んだ結果,日本では2020年度の住宅用電力消費が大幅に増加しました。
この増加した電力を補うために火力発電所からの電力供給を増加すると地球温暖化に繋がります。
太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーで補うのが望ましいのですが,これらは天候に左右され不安定だという問題があります。
そこで,蓄電池(バッテリー)を利用して電力の供給を安定させるというアイディアが登場します。例えば,太陽光発電パネルを屋根に設置している住宅に蓄電池を備えれば,日中に消費し切れなかった太陽光発電の電力を蓄電池に蓄え,夜に使用するということができます。
しかし,その蓄電池はどこから持ってくれば良いのでしょうか?
ここで注目したいのが,世界中で増加しつつある電気自動車(EV)です。2020年には世界のEV保有台数は1000万台を超えました。今後も増加し続ける見込みです。
これに伴い,数年後には中古のEV用リチウムイオン電池(LiB)が大量に排出される見込みです。
これから大量に廃棄されるEVの中古リチウムイオン電池をスクラップにして原材料(コバルト,ニッケル,リチウム等)を再生(リサイクル)するという対応策もあります。
しかし,EV用リチウムイオン電池は容量が初期の7〜8割に落ちると廃棄されてしまうので,電池としての寿命を全うしているとは言えません。
そこで,車載用として使えなくとも,住宅用の蓄電池(定置型蓄電池)として再利用(リユース)するという対応策が考えられます。
山口県では2016年から中古リチウムイオン電池のリユースに取り組んでおり,2017年から本格的に実験を開始しました。
実験施設の一つとして選ばれたのが,美祢青陵高校大気測定局です。ここで使用される電力は一般住宅の電力消費量とほぼ同じです。太陽光発電と定置型蓄電池を組み合わせることによって,商用電力(従来からの電力会社からの電力)にどの程度頼らないで自立して電力消費ができるのか,長期的に実験を行っています。
定置型蓄電池がある場合と無い場合とでどの程度,建物の電力の自立性が高まるのでしょうか?
太陽光発電の余剰電力を蓄電池に貯められる場合(ウィズ・バッテリー)とそうでない場合(ノー・バッテリー)とで比較を行いました。
SERという建築物の電力自立性を測る指標で比較したところ,ウィズ・バッテリーの場合,ノー・バッテリーの場合に比べて最大1.75倍,自立性が増す(商用電力に頼らずに再生可能エネルギーで建物の電力消費をまかなう)ことがわかりました。
CFD(数値流体力学)を応用して,建築物などの熱環境のシミュレーションを行います。シミュレーション手法の研究も行います。
省エネルギーを図るためには,現状のエネルギー消費活動を知る必要があります。実測,アンケート,公的統計などにもとづいて日本国内やASEAN諸国におけるエネルギー消費量の調査を行います。
MOT教育や研究活動に関して執筆した短い記事を再掲します。
2018年8月以前の記事はこちらをご覧ください:MOT月録過去分(2018年8月まで)
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