Research
ほ乳類のサイズセンシングメカニズム
動物には固有のサイズがありますが、どのような仕組みで維持されているのでしょうか?同じ種の中でもイヌのようにグレートデンからチワワなど、多様なサイズを持つ種も存在しますがどのようなメカニズムで体のサイズは決定されているのでしょうか?また、体の中の臓器や器官、あるいは一個の細胞はどのような仕組みで一定のサイズに成長し、さらにそのサイズに保たれているのでしょうか?
生物のサイズセンシングメカニズムの解明は、基礎生物学、発生生物学における生物の形作りの基本を理解する上で非常に重要な課題であり、医学・獣医学研究などの応用 生物学領域、疾患や遺伝病の解明においてきわめて重要な課題です。
また得られた知見を家畜・コンパニオンアニマルの改良などに応用することも視野に入れており、生物のサイズ制御機構の解明は幅広い分野に対して学術的な貢献ができる可能性を秘めています。
本研究室では、さまざまな分野の方々と共同研究を進めていきたいと考えています。もし興味がありましたらお気軽にご連絡ください。
動物には固有のサイズがありますが、どのような仕組みで維持されているのでしょうか?同じ種の中でもイヌのようにグレートデンからチワワなど、多様なサイズを持つ種も存在しますがどのようなメカニズムで体のサイズは決定されているのでしょうか?また、体の中の臓器や器官、あるいは一個の細胞はどのような仕組みで一定のサイズに成長し、さらにそのサイズに保たれているのでしょうか?
生物のサイズセンシングメカニズムの解明は、基礎生物学、発生生物学における生物の形作りの基本を理解する上で非常に重要な課題であり、医学・獣医学研究などの応用 生物学領域、疾患や遺伝病の解明においてきわめて重要な課題です。
また得られた知見を家畜・コンパニオンアニマルの改良などに応用することも視野に入れており、生物のサイズ制御機構の解明は幅広い分野に対して学術的な貢献ができる可能性を秘めています。
本研究室では、さまざまな分野の方々と共同研究を進めていきたいと考えています。もし興味がありましたらお気軽にご連絡ください。
研究テーマ
1. 倍数体マウス胚発生のロバストネス
2. 野生矮小マウスや大型動物のゲノム解析
3. 突然変異ミュータントマウスの解析
4. 肝細胞の特性解析
2. 野生矮小マウスや大型動物のゲノム解析
3. 突然変異ミュータントマウスの解析
4. 肝細胞の特性解析
研究テーマ
1. 倍数体マウス胚発生のロバストネス
・複数胚の融合胚、ならびに分割胚の発生
8細胞期の胚どうしを融合させて、いわゆるキメラ胚を作成するとサイズが大きな1個の胚ができます。また2細胞期の胚を分割すると小さな胚ができますが、その後それらの胚のサイズはどのように制御されるのでしょうか?
われわれはこの複合胚や分割胚の体外培養系を確立することによって、マウス胚は自律的なサイズ制御機構を持つ可能性を示しました(Hisaki et al., 2013)。
・倍数体胚とES細胞
マウスの体を構成する細胞は通常母方の染色体、父方の染色体の2本の染色体からなる、2倍体細胞から成り立っています。2細胞期の胚に電気をかけることによって(電気融合法)、通常よりも2倍量のゲノムを持つ倍数体胚(4倍体胚)を作ることができます。
この4倍体胚を構成する1つ1つの細胞は、細胞1個のサイズが2倍体細胞よりも大きいのですが、4倍体胚の体全体のサイズはどのようになるのでしょうか?
本研究室では世界に先駆けてマウス4倍体ES細胞を樹立し、その性状の解析を進めています。そこで、マウス4倍体ES細胞はマウス2倍体ES細胞とほぼ同様の性質、例えば多分化能を持つことが明らかになりました(Imai et al., 2015, Imai et al., 2016)。
また、マウス最大となる16倍体胚を世界で初めて作出し、解析を行ったところ、着床前のマウス胚盤胞の正常な形成は胚全体の細胞数が重要であることを明らかにしました(Imai et al., 2019)。
・複数胚の融合胚、ならびに分割胚の発生
8細胞期の胚どうしを融合させて、いわゆるキメラ胚を作成するとサイズが大きな1個の胚ができます。また2細胞期の胚を分割すると小さな胚ができますが、その後それらの胚のサイズはどのように制御されるのでしょうか?
われわれはこの複合胚や分割胚の体外培養系を確立することによって、マウス胚は自律的なサイズ制御機構を持つ可能性を示しました(Hisaki et al., 2013)。
・倍数体胚とES細胞
マウスの体を構成する細胞は通常母方の染色体、父方の染色体の2本の染色体からなる、2倍体細胞から成り立っています。2細胞期の胚に電気をかけることによって(電気融合法)、通常よりも2倍量のゲノムを持つ倍数体胚(4倍体胚)を作ることができます。
この4倍体胚を構成する1つ1つの細胞は、細胞1個のサイズが2倍体細胞よりも大きいのですが、4倍体胚の体全体のサイズはどのようになるのでしょうか?
本研究室では世界に先駆けてマウス4倍体ES細胞を樹立し、その性状の解析を進めています。そこで、マウス4倍体ES細胞はマウス2倍体ES細胞とほぼ同様の性質、例えば多分化能を持つことが明らかになりました(Imai et al., 2015, Imai et al., 2016)。
また、マウス最大となる16倍体胚を世界で初めて作出し、解析を行ったところ、着床前のマウス胚盤胞の正常な形成は胚全体の細胞数が重要であることを明らかにしました(Imai et al., 2019)。
2. 野生矮小マウスや大型動物のゲノム解析
体の小さな野生に近いマウスに注目し、実験マウスとのゲノムや表現型の比較などを行い、ボディサイズを決定している因子の同定を行います。また、比較的体の大きな野生動物のゲノムを解析し、比較的動物学的見地から、動物のサイズに関わる遺伝子やゲノム領域の探索し、動物のサイズが恒常的に維持される仕組みの解明を目指します。
体の小さな野生に近いマウスに注目し、実験マウスとのゲノムや表現型の比較などを行い、ボディサイズを決定している因子の同定を行います。また、比較的体の大きな野生動物のゲノムを解析し、比較的動物学的見地から、動物のサイズに関わる遺伝子やゲノム領域の探索し、動物のサイズが恒常的に維持される仕組みの解明を目指します。
3. 突然変異ミュータントマウスの解析
・peeweeマウス(理研BRCサイト)
塩基配列に点変異を誘発するエチルニトロソウレア(ENU)導入によるミュータジェネシスによって作出された、外見的には矮小以外にはほぼ正常な矮小マウス。Schimenti(TJL, 現Cornell University)によって確立された5番染色体rump white inversion特異的に点変異が存在する系を用いて作出されました。
ポジショナルクローニング法などの解析により、peewee矮小化の原因遺伝子の候補としてSlc10a4 (Solute carrier family 10 member 4)を同定しました (Lee et al., 2009)。現在、エレクトロポレーションを用いたゲノム編集によって、Slc10a4の変異マウスを作出し、より詳細な解析を行っています。
左:peeweeマウス 右:コントロールマウス
・Smallieマウス (BKS(HRS)-Ddr2slie/JngJ: The Jackson Laboratoryサイト)
遺伝学研究における世界的拠点である米国Jackson研究所において、トランスジェニックマウスの中から偶然発見された自然発生的な染色体性劣性遺伝矮小マウスです。矮小以外に、顔面形成異常、眼球突出、不妊などの表現型を持ちます。
染色体上の遺伝子変異を探し出すポジショナルクローニングという方法を用いた解析により、SmallieマウスはコラーゲンレセプターDDR2 (Discoidin domain receptor 2)が欠損していることがわかりました。また、DDR2は生殖機能に関与していることがわかりました (Kano et al., 2008, Matsumura et al., 2009)。さらに、軟骨細胞におけるDDR2の新たな機能 (Kawai et al., 2012)、ボディサイズや脂肪との関連が示唆されました (Kawai et al., 2014)。
左:Smallieマウス 右:同腹子正常マウス
・peeweeマウス(理研BRCサイト)
塩基配列に点変異を誘発するエチルニトロソウレア(ENU)導入によるミュータジェネシスによって作出された、外見的には矮小以外にはほぼ正常な矮小マウス。Schimenti(TJL, 現Cornell University)によって確立された5番染色体rump white inversion特異的に点変異が存在する系を用いて作出されました。
ポジショナルクローニング法などの解析により、peewee矮小化の原因遺伝子の候補としてSlc10a4 (Solute carrier family 10 member 4)を同定しました (Lee et al., 2009)。現在、エレクトロポレーションを用いたゲノム編集によって、Slc10a4の変異マウスを作出し、より詳細な解析を行っています。
左:peeweeマウス 右:コントロールマウス
・Smallieマウス (BKS(HRS)-Ddr2slie/JngJ: The Jackson Laboratoryサイト)
遺伝学研究における世界的拠点である米国Jackson研究所において、トランスジェニックマウスの中から偶然発見された自然発生的な染色体性劣性遺伝矮小マウスです。矮小以外に、顔面形成異常、眼球突出、不妊などの表現型を持ちます。
染色体上の遺伝子変異を探し出すポジショナルクローニングという方法を用いた解析により、SmallieマウスはコラーゲンレセプターDDR2 (Discoidin domain receptor 2)が欠損していることがわかりました。また、DDR2は生殖機能に関与していることがわかりました (Kano et al., 2008, Matsumura et al., 2009)。さらに、軟骨細胞におけるDDR2の新たな機能 (Kawai et al., 2012)、ボディサイズや脂肪との関連が示唆されました (Kawai et al., 2014)。
左:Smallieマウス 右:同腹子正常マウス
4. 肝細胞の特性解析
肝臓は約2/3を切除しても比較的早く元の大きさに戻るという、ヒトにおいては珍しい器官です。また、肝細胞は細胞中に多くの核を持つ、多核細胞が多い割合で含まれており、その機能はまだまだわかっていません。肝臓の大きさを維持する仕組みや肝臓特有の機能における肝臓における多核細胞の機能を探索し、器官の大きさや機能の維持に関する知見を得ることを目指します。
肝臓は約2/3を切除しても比較的早く元の大きさに戻るという、ヒトにおいては珍しい器官です。また、肝細胞は細胞中に多くの核を持つ、多核細胞が多い割合で含まれており、その機能はまだまだわかっていません。肝臓の大きさを維持する仕組みや肝臓特有の機能における肝臓における多核細胞の機能を探索し、器官の大きさや機能の維持に関する知見を得ることを目指します。